観光資産をデジタルアーカイブ 共創拠点やアプリで魅力発信

凸版印刷が東京・丸の内に開設した「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」。日本各地の文化財や観光コンテンツを最先端テクノロジーを用いて、デジタルアーカイブし、発信している。

NIPPON GALLERY Orientation Lounge

デジタル化した観光資産で
日本文化の魅力を世界に発信

凸版印刷は6月7日、東京・丸の内に「NIPPON GALLERY TABIDO MARUNOUCHI」(以下NIPPON GALLERY)をオープンした。凸版印刷の最新技術でデジタルアーカイブした、日本各地の国宝や文化財や史跡などの観光資産を体験できる。

欧州連合で公共文化施設の所蔵品デジタルアーカイブのオープンデータ化が義務付けられるなど、世界では文化財のデジタルアーカイブ化が進んでいる。だが日本では、国宝や重要文化財のほとんどがデジタルアーカイブされていないのが現状である。

一方、訪日外国人数は5年連続過去最高記録を更新、2017年は2869万人を達成した。政府は2030年に訪日外国人数6000万人という目標を掲げており、今後のインバウンドビジネスはさらなる拡大が見込まれ、観光ビジネスによる地方創生にも期待が高まっている。しかしその実現のためには、食事や宿泊などのホスピタリティだけでなく、有形無形の文化財をデジタルアーカイブし、その魅力を世界に向けて発信することが課題となっている。

NIPPON GALLERYは、日本の文化・観光資産の魅力を先端表現技術で世界に向けて発信し、地方創生・観光立国の実現に貢献していくことを目的として新設されたのである。

日本を魅力的にみせるための
最先端技術を集結

では、NIPPON GALLERYではどのような体験ができるのか。日本全国の文化、自然、生活に関する写真集や書籍、映像を集めた「ライブラリー」。観光施設情報をビジュアルから探すマルチ画面タッチパネルサイネージなど、回遊を促進する展示手法を体験できる「ツーリズムギャラリー」。4K3面カーブスクリーンのVR映像で没入感・臨場感に溢れた日本文化をバーチャル体験できる「VRシアター」。そのVRのメイキングプロセスや活用事例を紹介する「VRテクノロジーギャラリー」。名勝、自然遺産、匠の技、伝統工芸など有形・無形の観光資源を55インチモニター16面連動の8Kディスプレイで臨場感いっぱいにプレゼンテーションできる「スーパープレゼンテーションルーム」等々...。

言わば、これまでの凸版印刷の実績やノウハウを集結した、日本文化の魅力を発信するための最先端技術を体感できる施設なのである。

NIPPON GALLERY 館長の浦野信彦氏は本施設について、「日本全国の文化・観光資産の情報発信手法のモデルケースとして見てもらいたい。映像の美しさや迫力は実際に体感してはじめてわかるものです。官公庁、自治体、観光関連団体や企業にこれらの技術をぜひここに来て体感してもらいたい」と話した。

茶道や華道のように「旅道®」で
日本の旅をより深く楽しんでもらう

凸版印刷が日本の観光コンテンツを格納・発信するプラットフォームとして運営しているのが「旅道® (TABIDO)」である。そのコンセプト「何度も、旅したくなる日本へ」を実現するため、観光関連事業者や通信、決済など、様々なパートナー企業・団体と共に、インバウンドマーケティングや観光コンテンツの開発を行い、訪日前のメディア開発から、ICTを活用した様々な観光情報の発信、多言語環境整備など、外国人旅行者向けサービスの開発に取り組んでいる。

この5月には、マピオンとの連携でナビゲーション機能を強化した観光ガイド「旅道®アプリ」の新バージョンを公開。6月には「旅道®WEB」を新設した。アプリでは、ARやVRを活用したコンテンツやスタンプラリーなど、現地で旅を楽しくする機能や情報が搭載されている。アプリやウェブのコンテンツでは、"温泉の入り方"など、外国人にはなじみが薄い、日本の旅ならではの"旅道"を学習できる「旅の心得」も提供している。

同社地方創生・観光事業推進部長の伊藤順氏によると、自治体などから今最も相談件数が多いのは、6月から提供を開始した音声による多言語コミュニケーションサービス「VoiceBiz(ボイスビズ)」だという。翻訳可能な言語は、音声で11カ国語、テキストでは30カ国語。通常の翻訳機能では出てこないような専門用語やエリアの特産品、施設名などの固有名詞や、利用頻度の高い定型文を追加登録できる。「ボイスビズは、観光はもちろん、外国人労働者とのコミュニケーションや自治体の在留外国人窓口対応など、多様なシーンでの活躍が可能です」(伊藤氏)。

旅道®アプリ

地域の新しい価値を共に発見・創造し 世界に発信する拠点をめざす

凸版印刷が提供するこうした技術を企業や自治体は具体的にどのように活用できるのだろうか。浦野氏は言う。「実際にこちらに来て技術に触れてみれば鮮明にイメージできるはずです。観光事業者や自治体の方々、大学などと共創して地域の新しい価値を発見・創造して、日本の魅力を世界に発信する場にしていきたい」。

NIPPON GALLERYのコンセプトは、「Experience 日本を体験する」、「Connect 地域・人をつなぐ」、「Create 未来を創造する」だという。

同社がこれまで手掛けた文化・観光資産のコンテンツ化は350件以上。実績のなかで培ったノウハウが活かされ、個々の自治体における地方創生や観光活性化が加速し、新たな価値がこの場から生まれていくことが期待される。

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