期待されるレガシーの領域とは 日本が持つ「本当の強み」を活かす

東京オリンピック・パラリンピックの経済効果は約30兆円。そして、その先には、レガシー(将来に向けた成長基盤)を築くことが重要となる。どういった領域において、レガシーは創出されるのか。みずほ総合研究所・経済調査部長、太田智之氏に話を聞いた。

太田 智之(みずほ総合研究所 経済調査部長)

みずほ総合研究所では、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果を約30兆円と試算しています。内訳は、施設設備や大会運営などによる直接効果が約2兆円、その10倍以上となる約28兆円が都市インフラ整備や観光需要増大などによる付随効果です。

一部には、2020年以降の反動不況を心配する声もありますが、ロンドン・オリンピックまでの過去10大会のうち、オリンピック後に景気が悪化した国はバルセロナ大会のスペインのみです。オリンピック開催後、成長ペースが減速することはあっても、一気に景気が悪くなることは極めて稀です。

というのも、オリンピックには、開催に伴う都市インフラ整備や世界に向けた魅力の発信(認知度向上)など、プラスの効果が多々あるからです。今、重要なのは、ただオリンピック後を心配するのではなく、オリンピック開催がもたらすプラスの効果に着目し、それを自社の味方とするような成長戦略を描くことであり、オリンピック後のレガシー(将来に向けた成長基盤)を築くことです。

オリンピックを機に成長する可能性がある産業として、「観光」「健康」「部素材を含めた情報・通信の技術」が挙げられます(図1参照)。

図1 オリンピック・パラリンピックが築く「レガシー(将来の成長基盤)」

出典:みずほ総合研究所・資料

観光業の拡大に必要なこと

まず「観光」について言うと、日本は観光競争力指数ランキングで世界4位にもかかわらず、海外旅行者シェアでは16位の1.7%(UNWTO調査、2015年実績)。訪問客数で大きく見劣りしており、日本にとって観光は、まだまだ拡大の余地のある産業です(図2参照)。

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