2017年9月号

「中国越境EC」市場攻略のポイント

中国越境ECで大ヒット 「消費者目線」でのファンづくりがカギ

嶋 英樹(スタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニー 海外事業部 事業部長)

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中国越境EC向けに月10万個以上のヒットが続いている朝用マスク「サボリーノ」。同製品を販売するスタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニーは、大手ではないからこそ、消費者目線に立ち、いかにファンづくりを行うかを考え抜き、成功を収めている。

嶋 英樹(スタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニー 海外事業部 事業部長)

きっかけは「偶発的」

化粧品を開発し、世界14の国と地域へ販売するスタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニー。同社海外事業部事業部長の嶋英樹氏は、「約10年前、国内マーケティングを担当する中で余剰在庫品を台湾、香港の企業に販売をしたのが、海外貿易事業のスタートです。1年ほど前より中国越境ECにも取り組んでいますが、ヒットのきっかけは偶発的でした」と話す。

「爆買いや越境ECといった言葉が頻繁に使われる前から、台湾をはじめアジア各国へ輸出しておりましたので、台湾や香港で売れている商品は把握しておりました。2013年頃から中国人による爆買いが始まった頃、その商品がすべて2010年頃に台湾の本やインターネットで紹介され、現地で購入されていたものであると気が付いた時はとても驚きました」

これは、中国からインターネットが海外に繋がるようになったことと、日本への関心が高まり、ビザが解放されたことなどが背景にあり、まず中国の方が集めた情報が同じ言語である台湾の方が発信していた情報だったからであるという。

「当初、中国の方に買われていた爆買い商品の多くは、これを狙ってゼロから仕込まれたものではありません。台湾や香港で売れていたものが、日本で中国の方に売れ始め、口コミの連鎖により爆買いが始まったのです。その後は中国からも商品を購入するできる越境ECによりさらに大きなマーケットとなりました。企業が仕込んだものではなく、偶発的な情報の繋がりと消費者発信の力です」

中国越境ECで大ヒットになった朝用美容マスク「サボリーノ」

チャネルありきではなく、
消費者目線で

嶋氏によると、化粧品はネットの時代の前から口コミの文化が根強くあり、それが今、インターネット、SNSの時代になり、より力を持つようになったのだという。そこで、まずはいかにして消費者の手元に商品を届け、実際に使い、ファンになってもらい、口コミで広めてもらうかを考えている。そうであるからこそ、日本からメイクアップアーティストを連れていっての日本式メイクアップの勉強会や、国が進めるクールジャパンのイベントに、大手化粧品メーカーと並んで出展するなど、まずは現地でのリアルイベントを大切にしている。

またファンづくりの観点から、「日本では、店舗出店でも、イベントでも、それぞれの個別の採算を考えることが多いですが、特に海外ではトータルで採算をとることを考え、長期的なファンづくりに重きを置いたほうが、お客様にもスタッフにも喜んでもらえ、効果が高くなると考えています。当社ではイベントを行なう際、過剰な費用対効果や数字目標を設定しません。それを考えると、スタッフも、現地の代理店も、ひとつでも多くの物を売り、売り上げにつなげなければということになり、顔つきが悪くなります。そして、その気持ちは、お客様にも伝わってしまいます」と消費者に対する姿勢にもこだわりを持つ。

このようなイベントでのコミュニケーションを土台として、2016年に朝用美容マスク「サボリーノ」を化粧品の口コミ情報サイト、アットコスメ(@cosme)を運営するアイスタイル経由で、中国の独立系のコスメアプリ、小紅書(RED)で販売することにしたのが越境ECのはじまりだ。

「中国では、誰も知らないブランド、誰も知らない商品ですから、いきなり天猫(T-mall)で売るより、まずは、コスメフリークの人がターゲットだと思い、インフルエンサーを対象に2000個をサンプルとして配布しました。商品に関する良いコメントだけでなく、良くない商品評価も大事で、これらは消費者が商品を選ぶ際の貴重な情報になります。当社は、大手企業のように大量な宣伝をともない最初から広くたくさんの商品を売れるわけではありません。小さいところで人気が出て、ファンの口コミによって、拡げていくやり方は、国内でも国外でも、また、リアルでもネットでも違いはないと思います」

「サボリーノ」のサンプルを配布した結果、好意的なコメントが多く、嶋氏は「これは来るな」と思ったという。そこで、T-mallでも販売することにし、これが大ヒットにつながった。月10万個のヒットを続けているが、実際にはそれ以上の注文があり、生産が追い付かない状態となっている。

消費者に使ってもらうために
インフルエンサーを活用

同社は、今後の展望として、中国越境ECで、国内では十数年のロングセラー商品のヒットも狙っており、精選した50人のインフルエンサーにそれぞれ1000個、全部で5万個を提供する戦略を開始している。これは、インフルエンサーの活用が流行っているからそうするのではなく、まずは、消費者に使ってもらうことが目的だ。

「同じお金をかけるのに、どう使うかは考え方だと思いますが、消費者の手元に実際の商品を届けることにお金を使いたい」という。そして、ファンになり、口コミで広げてもらうよう、意識的に仕掛け、うまくいくかどうかの、テストケースにしていく構想だ。

「同じ商品でも、日本人とその国の人が持つイメージは異なりますし、どのサイトをどういうふうに使ったらよいかなど、日本人ではわかりません。また、マーケティングを行う際に、時間をかけて分析を行うよりも、スピードが大事になっており、そういった点も意識しています」と語る嶋氏。

中国の感覚をつかんだうえで、消費者目線で、ファンになってもらうような取り組みを次々と展開する同社の取り組みが注目される。

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