温暖化時代の防災対策 気候変動への適応とは何か

暖冬は農作物に影響し、厳冬は寒さゆえの健康リスクが増す。気候変動は社会に様々な影響を及ぼし、ときに大きな災害をもたらすこともある。環境の変化とどう向き合えばいいのか、気候変動への適応に注目が集まる。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第五次評価報告書では、温室効果ガス(GHG)の排出削減のために厳しい施策を採ったとしても、世界の平均気温上昇と気候変動の影響を避けられないとの予測が示された。この予測を受けて、GHG排出削減による気候変動の緩和だけでなく、変化を受け入れ適応策を考えることも重要との認識が広まりつつある。

我が国では、環境省が中心となって、中央環境審議会が「気候変動影響評価報告書」を取りまとめ、昨年11月には我が国政府として初めて「気候変動の影響への適応計画(以下、適応計画)」が閣議決定された。これまでにも宮崎県でのマンゴー栽培や北海道での稲作といった個別の分野において気候変動への適応の好事例が出ているが、今回の適応計画は、各府省庁共通のビジョンと基本戦略を定め、共通の評価方法で実施された気候変動影響評価結果も踏まえて、関係府省庁が適応策を推進すると表明したことに意味があると、環境省の藤井進太郎氏は言う。

「我が国の年平均気温は100年あたり1.14度上昇しています。今後、厳しい温暖化対策を取ったとしても、21世紀末の平均気温は20世紀末比1.1度上昇との予測があります。GHG排出量が非常に多ければ4.4度上昇の可能性もあるのです。これを踏まえて、政府では5つの基本戦略を立てました。それは(1)政府施策への適応の組み込み、(2)科学的知見の充実、(3)気候リスク情報等の共有と提供を通じ理解と協力の促進、(4)地域での適応の推進、(5)国際協力・貢献の推進です。今回の適応計画は、昨年末COP21において採択されたパリ協定の実施にも貢献できるものです。」

注目すべきは政策への組み込みを明記した点だ。気候変動の影響は多岐にわたる。政府が施策に適応を組み込むことで関係省庁が垣根を超えて連携し、一体となって対策を推進していくことが期待される。

日本の年平均気温偏差

日本の年平均気温は100年あたり1.14度上昇している。

出典:気候変動監視レポート2014(気象庁)

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