「名簿の力」で減災を実現~避難行動要支援者の円滑な避難~

災害時に誰もがスムーズに避難できるわけではない。防災無線を発信しても自力で移動できない人もいれば、呼びかけが伝わらない人もいる。いざというときに支援すべき人たちはどこに、どのくらいいて、どのような支援を求めているのか。地域の実情を把握し、防災・減災に生かすための名簿作成が各地で進んでいる。

東日本大震災ではたくさんの悲劇が起きた。寝たきりの要介護者と妻が避難せずに自宅で津波の犠牲になったが、のちの聞き取りによると、避難したくとも自力では避難できなかったという。あるいは、消防団員や民生委員が要支援者を助けに行ったが、避難することの説得に時間がかかり、そこで津波に飲み込まれるなど、多数の支援者も犠牲になった。もしも支援が必要な人々を予め把握できていたら、結果は違っていたかもしれない。

大規模災害における犠牲者は高齢者や障がい者が多い。東日本大震災では死亡者の66%が高齢者であった。障がい者については全体を網羅する統計がないが、複数の自治体で障がい者の死亡者率が全体の死亡率に比して高いことが明らかになっている。

こうした苦い反省をもとに、平成25年6月に災害対策基本法等の一部が改正され、各市町村が任意で行ってきた避難行動要支援者名簿の作成が義務化された。それに伴い、個人情報保護法制との関係が整理され、市町村が名簿作成に必要な範囲で個人情報を利用できるようになった。また、作成した名簿は、平常時には本人の同意のもと、災害時には本人の同意がなくとも、消防団や民生委員等の支援者に提供できるようになった。

年齢階級別死亡者数

東日本大震災における死亡者のうち60歳以上の高齢者は10,360人と66.1%を占めた。この反省を踏まえて、災害対策基本法等の一部が改正された。

出典:内閣府

 

名簿を利用し避難行動要支援者を把握

市町村の福祉部局が把握している要介護者の情報等を利用すれば、円滑に要支援者名簿を作ることが可能となるが、各市町村が定めている個人情報保護条例では個人情報の目的外利用を制限しているため、この点が課題になっていた。

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