帰宅困難者を出さないBCP
東日本大震災では、首都圏に約515万人の帰宅困難者が発生した。災害時の最優先事項である救命活動、企業の事業継続、早期の復興につながるため、東京都は、2013年4月、帰宅困難者対策条例を施行した。
東京都総務局総合防災部事業調整担当課長森永健二氏は、「帰宅困難者対策が災害対策条例の中に盛り込まれるケースはあるが、これ単独での条例は、東京都が初めて」と語る。
身を守るには外に出ないこと
群衆なだれ、火災、落下物の危険
条例制定のきっかけは、東日本大震災だった。震災当日、交通が止まった首都圏では、515万人の帰宅困難者が発生、街にあふれた人が車道まで拡がった。
「今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が南関東で起きる確率は、70%と言われています。もし、大地震が発生し、多数の負傷者が出た時に、帰宅困難者が街にあふれれば、救命活動にも支障をきたしかねません」
また、帰宅すること自体も危険だ。「大地震の際は、落下物もあり、建物の外に出ること自体が危険です。また、517万人と予想される帰宅困難者が都心から一斉に郊外に向け歩き出せば、満員電車と同水準、またはそれ以上の混雑が数時間も続くと予想され、群衆なだれがおきる危険性が非常に高いのです。さらに、東京駅から10kmの地域には、木造建築が多く、火災が発生する危険もあるため、むやみに帰宅するよりも勤務先や一時滞在施設に留まる方が身を守ることにつながるのです」
自助と共助の精神に基づく備えが必要
条例では、事業所に従業員が留まるために、事業者に、3日分の水や食料などの備蓄を求めている。一般に、人の生存率は3日を境に下がるため、人命救助活動は災害発生から3日間に集中する。この間は、帰宅者の安全確保が十分に行えないため、帰宅を見合わせて欲しいというわけだ。その際、従業員との連絡手段に加え、従業員と家族との連絡手段も事前に確保しておくのが望ましい。
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