地域住民主導が可能にした県境をまたぐ地区で進める地区防災計画
県境を意識せず近所付き合いをしている地区の住民であっても、属する県が異なると行政の防災対策は異なってしまう。石川県加賀市吉崎地区、福井県あわら市吉崎地区を対象に、地域防災計画や自主防災計画ではカバーしきれない領域における地区防災計画の可能性を分析する。
はじめに
災害対策基本法の改正によって地区防災計画制度が設けられたことで、各地で計画策定に向けた取組みが進められている。地区防災計画は、地域の実情に応じた区域設定も柔軟性が特徴の一つではあるが、そういった事例はまだ多くない。
とはいえ、計画対象区域の設定が、従来の防災上の課題を解決する糸口となることもある。ここでは県境をまたいだ石川県加賀市吉崎地区、福井県あわら市吉崎地区を対象に、地域防災計画や自主防災計画ではカバーしきれない領域での地区防災計画の可能性を考えてみたい。
県境をまたぐ地区が抱える課題
津波浸水想定
両地区の住民は普段県境を意識せず近所付き合いをしている。中学校などは県境を越えて通学することもあるという。しかしながら、県境をへだてることで防災対策には違いがみられる。その代表的なものが津波の浸水想定である。
石川県と福井県で設定する震源等が異なることによって、吉崎地区での津波想定、来襲時間が異なっている。加賀市側では想定を重く受け止め、避難訓練やそれに関連する活動を積極的に推進しているが、あわら市側では吉崎地区での津波被害にはさほど注意が払われていない。
避難場所としての小学校
加賀市側は吉崎地区が含まれる三木地区としての防災訓練を実施する際、吉崎地区住民にはあわら市立吉崎小学校を避難場所として指定し、速やかな移動を促している。
しかしその施設は加賀市のものではなく、当然地域防災計画によって指定された避難所でもない。地区住民が小学校長に申し入れをして災害時の避難場所としての利用を一応認められているものの、実際の災害時にはこれまで避難訓練をしていないあわら市側の住民が避難をしてくる事にもなり、その際には両市の住民による混乱も想定される状況であった。
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