地域密着・主導型の防災を推進させる地区防災計画ガイドライン

地区防災計画ガイドラインは、これから地区防災計画の作成を検討している地区居住者等が、地区防災計画を作成するための手順や方法、計画提案の手続等について説明している。
「地区防災計画ガイドライン」内閣府(防災担当)平成26年3月より

 

図 ガイドラインの活用ページ

出典:「地区防災計画ガイドライン」内閣府(防災担当)平成26年3月より

 

1995 年の阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋から救出された人の約8割は、家族や近所の人々によって救出されたといわれています。復興においても、地域コミュニティの活動やボランティア、NPO 等の市民相互の関係が相まって、被災者の生活再建、まちの再建等が進められました。

その際に重要な役割を果たしたのが、地域への愛着や関心を契機として生まれた、社会的なつながりや相互の信頼感であり、ソーシャル・キャピタルが復興まちづくりを推進する上での鍵概念であるといわれています。

我が国は、これまで多くの自然災害に見舞われてきましたが、近年は、首都直下地震、南海トラフ地震等の大規模地震の発生が懸念される中、安心・安全に関する地域住民の皆さんの関心が高まってきている。

このような状況を踏まえ、2013年 6 月に、災害対策基本法が改正され、市町村の一定の地区内の居住者及び事業者(地区居住者等)による自発的な防災活動に関する「地区防災計画制度」が創設された。

本制度は、市町村の判断で地区防災計画を市町村地域防災計画に規定するほか、地区居住者等が、市町村防災会議に対し、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めることを提案することができる仕組み(計画提案)を定めている。

地域による地域のための「地区防災計画」

町内会などの自治会や地域コミュニティ全体で、自然災害に対して、防災や減災の意識を持つことが大切になる。

地域に住む人たちが、常に意識し、災害に強くならなければ、また地域コミュニティが防災に取り組まなければ、自らの命を守ることも、自らの地域を守ることもできないということを、阪神・淡路大震災や東日本大震災の大震災で学んだ。

減災というのは、被害を少しでもゼロに近づけようと努力するということ。トップダウンの取り組みだけでなく、ボトムアップの取り組みを取り入れ、広域レベルの対策に地区レベルの対策を加えることが求められる。公助や自助だけでなく、共助を充実させ足し合わせることが必要となってくる。地域密着型あるいは地域主導型の防災である。そこで問われるのは、いかにして地域コミュニティ独自の防災力を向上させるかである。

災害は忘れた頃にやってくる

地区防災計画を活用して、いざというときに地域コミュニティごとに効果的な防災活動を実施できるようにすることが重要となる。

そのためには、地区の特性を踏まえた、独自で実践的な防災、減災計画作成を行う。この計画作成を通じて、地域コミュニティにおける共助の意識を喚起、醸成させ、地域に暮らす人々の知恵の伝承や人材育成を進めることによって、総合的に地域防災力を向上させることが可能になる。

また、防災活動をきっかけとして共助による活動が活発化し、良好な地域コミュニティの関係を構築することにもつながっていく。今後、全国各地域で、この地区防災計画制度が、地域コミュニティの維持・活性化に役立つ。

いざというときに地区居住者等が、地区防災計画を活用して、行政と連携して、地域コミュニティごとに効果的な防災活動を実施できることは、地域防災力の向上につながり、平常時・災害時等を通した地域コミュニティにおける住民の生活や事業者の活動等の維持・活性化につながる。しかし、災害時は計画外のことが多数発生するので、全てを計画化しようとするのではなく、災害時に計画外のことが発生しても、地域コミュニティにおいて、適切に対応できる体制を構築し、先人の知恵を活かし、人材を育成することが求められる。

地域コミュニティにおいて、(1)人的なネットワーク、(2)お互い様の意識(規範・互酬性)、(3)相互の信頼関係等が構築されている場合は、共助による活動が盛んであり、防災や復興にも良い影響があるともいわれている。

このようなソーシャル・キャピタルを促進することによって、日頃の地域コミュニティにおける良好な関係を維持することが、いざというときに地域コミュニティにおいて効果的な防災活動を実施することにつながっていく。

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