気候変動に伴う極端気象や自然災害の増加の実態とその理由

温暖化によって気温・降水量・海面水位の増加等の極端現象は起きやすくなる。すべての自然災害をインフラで防ぐことは不可能である。さまざまなシステムで対応するソフトな防災対策が求められる。

集中豪雨による土石流で被害を受けた集落(2009年7月、山口県防府市)(イメージ)
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はじめに

毎年、毎年、極端な気象現象が起きる。(従来は、「異常気象」という言葉がマスコミを中心に使われてきたが、自然現象としては異常ではなく、ただ、まれにしか起きない現象なので最近は極端現象と呼ぶようになってきた。本文でも極端現象という語を用いる)。

2014年広島の土砂災害や15年関東・東北豪雨などが思い起こされる(この稿を書いている時に熊本地震が発生した)。地震に伴い堤防などが破損し、引き続く梅雨期での豪雨災害が懸念される。

現在では、このような複数の要因が関係する複合災害に注意を払うべきであろう。

地球温暖化による災害の増加もこのような複合災害の一つとも考えられる。IPCCの第5次報告書においても、「温暖化は疑う余地がない」と述べられており、我々は、心して対策に頑張る必要があろう。

しかし、災害は極端現象の威力がすべてを決めているわけではない。確かに、極端現象がなければ災害は起きないが、極端現象が起きても人里離れたところであったり、防御が完全であれば災害の影響は抑えることが可能である。

つまり、災害は、災害外力(極端気象や地震・津波などの自然現象に基づく災害を引き起こす力)と、災害外力にさらされる程度(暴露)と災害外力に抵抗する力(レジリエンス)の3つの要因によって決まるのである。したがって、温暖化に伴い災害外力がどう変化するかを知ると同時に、その知見を活かした対策、例えば、堤防や建物の強靭化を図る、あるいは、危険を避けるような地域全体のデザインを考える、などの様々な対応が必要となる。

極端現象の現状

地球の気候システムは、太陽からの熱エネルギーで駆動されている。太陽から入ってきた熱は、地球を暖め、温まった地球は熱を宇宙に放射する。入ってくる熱と出てゆく熱が釣り合うところで地球の温度は決まる。この際、地球では、水が、気体、液体、固体の3つの形態で存在できることが重要である。まさに、青い海と白い雲で特徴づけられる水惑星なのである。

温室効果気体は、宇宙に放出される熱の一部を気候システム内部に取り込むことであるから、全体の温度(温度とはエネルギーを図る単位である)は増加する。

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