壁を取り払い地域にイノベーションを起こすには

経営コンサルタントとして全国の中小企業のサポートに取り組む、東海クロスメディア社長の三輪知生氏の著書の中から、イノベーションを生み出す地域基盤づくりのポイントを聞いた。

「産業構造の空洞化で疲弊する地元・岐阜県を何とかしたい」。そんな思いで2008年、故郷に戻った三輪氏。だが、「保守的な思考特性」を持った地方の自治体、経営者を巻き込んでイノベーションを起こそうとすると必ず壁に直面してきたという。

その真因を探ると、目の前のことを黙々とこなすことに馴らされ、新しいことを排除しようとする「知識の壁」「意識の壁」、減点主義で評価され、事なかれ主義に終始する「組織の壁」に行き着くという。「地方に行けば行くほど、守ることが自己目的化されている」ことを深刻に受け止めてきたと三輪氏は語る。

三輪 知生 東海クロスメディア 代表取締役社長

その"岩盤"を突き崩しイノベーションを起こすには「発想の転換」を4つのプロセスで進めていくことが大切だと言う。まずは過去の経験からくる硬直的な思考を脱するための「柔軟な発想」からスタートし、ピンチを絶好のチャンスととらえる「逆転の発想」の習慣化を説く。その上で前例踏襲や他の模倣ではない「突き抜ける発想」で新たな価値として提示する。「ここで気を付けないといけないのが、とんでもない突き抜け方をしてあらぬ方向へ行ってしまうことだ」と三輪氏。あくまでもその地域特有の自然環境や住民の活力を生かし、これらを磨きあげる「原点回帰の発想」に着地させることを忘れてはならないと指摘する。

イノベーションを生み出す
地域基盤づくりを

では、イノベーションが起こりやすい地域基盤とは何か。三輪氏は「外部環境の変化を敏感に察知し、積極的に適応していこうとする基本姿勢」「変革に向けた首長の強い意志とリーダーシップ、または担当部署が変化を恐れず自ら前向きに考えて実行しようとする組織風土」「行政のビジョン策定や事業計画策定時における意思決定のプロセスに、民間の知見やノウハウを積極的に注入する制度設計や仕組み」の3つが中立・公正・公平な視点のもと行われることであると語る。

その実例が三輪氏自らかかわる岐阜県恵那市の取り組みだ。恵那市では若手経営者を集め市職員とともに産業振興ビジョンを策定。民間から専門家を招いて「恵那くらしビジネスサポートセンター」を開設し、部署の壁を越え、移住・定住とビジネスサポートの窓口を一括化した。さらに地域産品の開発販売による"外貨"獲得を目的とした地域商社「ジバスクラム恵那」を、民間の商社出身者を招いて立ち上げた。

「自治体は具体的な成果を導くための場と機会を提供し、意思決定のプロセスから実行までを民間に委託する姿勢で取り組むことが官民共創のあるべき姿」と三輪氏。

著書では、イノベーション創出における壁とそれを越えるための在り方、さらに壁を克服した先進的な事業事例が10例掲載されており、イノベーションが創出される地域基盤づくりのための良書となっている。

岐阜発 イノベーション前夜-小さな会社を『収益体質に変える』事業のつくり方
URL https://www.amazon.co.jp/dp/4820120980

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