冨山和彦氏 ローカル産業のDXこそが日本・地域経済再生の鍵
コロナ禍によりこれまでの常識が覆されつつある。ローカル、グローバル、そして金融へと経済的ダメージが波及していくことが予想されるなか、我々は今後の経済・社会をどう再構築していくべきか。大小さまざまな事業再生を手がけてきた冨山和彦氏に提言いただく。
コロナ危機の地域経済への
影響(L → G → F)
コロナ危機の第一波は、旅行や移動が制限されることで観光・外食などのローカル経済圏(L)を襲った。第二波は、先行き不安による車や家電などの耐久消費財の買い控えを引き起こし、製造業をはじめとするグローバル経済圏(G)の企業にも大打撃を与える。危機が長引き、実質破綻状態の企業が増えると次は銀行の貸し付けが焦げ付き、第三波としてファイナンシャルクライシス(F)にまで余波が及ぶ可能性がある。
地域経済にとっては、L型産業の観光・外食などはもちろん、地域内の中堅・中小製造業(G型産業)にも大きなダメージが生じつつある。また、金融ショックとなれば最初に打撃を受けるのは財務基盤の弱い地方銀行である。
当面の感染症の拡大を鎮静化できても、経済的打撃は残念ながら長期化することはほぼ間違いなく、範囲もどんどん広がっていく。今後も移動の制限は続くため、外国人旅行者をターゲットとする、外需に依存する観光業・宿泊業や、耐久消費財向けの部品メーカーなどが回復するまでには相当の時間を要するだろう。
図1 コロナ禍の経済への影響

経済的ダメージは、まず観光や外食など、地域資源活用型・地域密着型のビジネスであるローカル産業を襲った。影響は、終息の見通しが不透明なことを背景に製造業を中心としたグローバル経済にも及びつつある。この状況が長引けば金融業界にも余波が及ぶ恐れがある
出典:編集部作成
進む、地方への回帰
目前の状況については悲観的にならざるを得ないが、コロナ後に目を向けると、地域経済にとっては、これを境に人の流れや物の流れが地域に回帰する契機にもなる。なぜならば、今回のコロナショックで改めて明らかになったとおり、大都市への過剰集中は、この手のリスクイベントに対する社会と経済の耐性・抵抗力を脆弱化する。東京をはじめとした大都市は、人口密度が高く、満員電車をはじめ三密(密閉・密集・密接)の生活スタイルそのものである。今後の自然災害などに備え大都市指向一辺倒な流れに見直しの機運が高まるだろう。
また、外出自粛要請のなかで働き方は大きく変わり、ウェブ会議システムの利用など自宅からのリモートワークが大幅に増加している。それだけでなく、これを契機に、リモートワークを支えるデジタルツールの導入が進み、デジタルトランスフォーメーション(DX)は大きく加速する。遠隔で仕事をすることができるようになれば地方と都心に大きな違いはない。わざわざ満員電車に長時間揺られてストレスを抱えて通勤する必要はないのである。そもそも都会での暮らしは高い住居費や人混みなど高コストで高ストレス。遠隔システムが一度出来上がってしまえば、地方での生活や、大都市と地方の2拠点居住へ移行していく人も増えていく。
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