2020年2月号

SDGsの実践 あるべき指標と評価

サステナブル投資の定義と方法

馬奈木 俊介(九州大学大学院工学研究院 都市システム工学講座 教授/九州大学都市研究センター長・主幹教授)、松永 千晶(九州大学大学院工学研究院 環境社会部門 都市工学研究室 助教)

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1.サステナブル投資の定義とSRI・CSRとの関係

企業活動を通じたSDGsへの取組みのインセンティブとして、成否の鍵となるのがサステナブル投資であり、その判断要因となるのがESGであることはこれまでにも触れてきたが、ここからはあらためてサステナブル投資や、ESGそしてCSRとの関係について述べたい。

前回コラムでも紹介したGlobal Sustainable Investment Alliance (GSIA)が隔年で公表している報告書1) - 4) によると、サステナブル投資を「ポートフォリオの選択やマネジメントにおいて、環境・社会・ガバナンスの要因(ESGファクター)を考慮した投資アプローチ」と定義づけている。ESG投資という名称をサステナブル投資と同義として使用している理由はここにあると考える。

また報告書では、関連する責任投資(Responsible Investing)あるいは社会的責任投資(Socially Responsible Investing: SRI)と厳密に区別せず、包括的にサステナブル投資として定義するとしている。これらが脚光を浴び始める契機の一つに、2006年にコフィ・アナン国連事務総長(当時)が提唱した「責任投資原則(Principles for Responsible Investment: PRI)」があるが、PRIにおいても「投資先企業の評価には従来の財務情報に加え、環境問題への対応(Environment)、社員の機会均等や地域社会への貢献などの社会的問題への対応(Social)、グローバル化に対応した経営体制や企業倫理などのポリシーといった企業統治(Governance)のような非財務情報を考慮するべき」とされていることから、責任投資あるいは社会的責任投資とサステナブル投資はほぼ同義と思われる。しかし、一方で(社会的)責任投資は「倫理観」に基づき、投資を通じて社会を良くすることが目的であるのに対して、サステナブル投資はESGに十分配慮できている企業への投資は長期的な企業価値向上やリスクの低減につながるという従来の投資判断と同様の考え方に基づくものとされている。5)つまり、前回に述べたフィランソロピーか否かの観点においては、(社会的)責任投資とサステナブル投資とは分けて考えるべきであろう。

ここまでは主に投資家側の話をしてきたが、投資を受ける企業について考えると、サステナブル投資と(社会的)責任投資の関係はESGとCSRの関係に通ずる。CSR(Corporate Social Responsibility,企業の社会的責任)とは、企業が顧客、株主、従業員、取引先、地域社会など、企業を取り巻くさまざまな利害関係者(ステークホルダー)からの信頼を得るための活動とされている。6) 一方で、ESGはサステナブル投資において投資判断材料となる企業の環境・社会・ガバナンスに関する活動や情報を指す。ここで注意したいのは、CSRは企業側の視点で、ESGは投資側の視点で企業の社会的責任を見ている点である。先にも述べた通り、サステナブル投資においては、投資家は企業の価値向上とリスク低減という本来の投資判断を企業のESGへの取り組みを見ることで行い、企業はESGに関する活動や情報によって投資家からの資金調達を可能にする。つまり、双方にとってサステナブル投資やESGに関する取り組みは、その定義や背景の通りであれば、フィランソロピーにはならないだろう。

2.サステナブル投資の方法と国内外の傾向

GSIAは最初の報告書「Global Sustainable Investment Review 2012」において、サステナブル投資は世界標準的に以下の7つに分類できるとしている。

①ネガティブ/排他的スクリーニング(NEGATIVE/EXCLUSIONARY SCREENING):特定のESG基準に基づいて、あるセクターや企業あるいはその活動をファンドやポートフォリオから排除する方法。

②ポジティブ/ベスト・イン・クラススクリーニング(POSITIVE/BEST-IN-CLASS SCREENING):業界同業者と比べてESGに関する成果を挙げているセクター、企業あるいはプロジェクトへの投資。

③規範に基づくスクリーニング(NORM-BASED SCREENING):OECD、ILO、国連、ユニセフなどによるビジネスに関する国際規範に基づき投資先をスクリーニングし、最低基準に満たない企業を排除する方法。

④ESG統合(ESG INTEGRATION):投資マネージャーによる財務分析にESGファクターを体系的・明示的に含む方法。

⑤サステナビリティテーマ投資(SUSTAINABILITY THEMED INVESTING):サステナビリティに特化したテーマや資産への投資(例えば、クリーンエネルギーやグリーンテクノロジー、持続可能な農業など)。

⑥インパクト/コミュニティ投資(IMPACT/COMMUNITY INVESTING):社会(S)または環境(E)問題の解決に目的を絞った投資。サービスが行き届いていない個人やコミュニティ(地域社会)に特化した投資や、明確な社会・環境への貢献のための企業の資金調達が含まれる。

⑦コーポレートエンゲージメント・株主アクション(CORPORATE ENGAGEMENT AND SHAREHOLDER ACTION):企業の行動に対して株主権限の使用により影響を与えること。株主権限には、直接的なコーポレートエンゲージメント(上級管理職や企業取締役会との対話)、株主提案の提出あるいは共同提出、包括的なESGガイドラインに基づいた議決権行使を含む。

世界的に見ると、これらの方法のうちネガティブ/排他的スクリーニング、続いてESG統合による投資額が多い(図1)。ネガティブ/排他的スクリーニングには、ESGの観点から不適切な、例えば兵器や原子力発電、児童就労や、最近では石炭発電に関わる企業への投資から撤退するいわゆる「ダイベストメント(Divestment)」などが挙げられる。次号以降でも述べるが、投資判断やその結果の現れである株価は投資先企業の非財務情報、特にネガティブな情報の影響を受けやすいという通説6), 7)に従う結果となっている。

方国や地域別で見ると、それぞれ状況が異なる。図2は日本、ヨーロッパ、アメリカにおける2018年のサステナブル投資運用額に対する各投資方法のシェアを示したものである。

図1 サステナブル投資手法別投資額

出所:文献1)-4)を元に筆者作成

 

図2 国・地域別サステナブル投資手法のシェア(2018年)

出所)文献4)を元に筆者作成

 

世界で最もサステナブル投資運用額が大きいヨーロッパは、全体の傾向と同じくネガティブ/排他的スクリーニングが圧倒的に多く全体の約42%を占めるが、年々減少傾向にあり、代わりにコーポレートエンゲージメントやESG統合方式が成長を続けている。アメリカではESG統合方式(約44%)とネガティブ/排他的スクリーニング(約37%)が多くを占める。対して日本では、他の国・地域と異なり、コーポレートエンゲージメント・株主アクションによる投資が最も多いが(約44%)、年々ESG統合方式(約38%)がシェアを伸ばしつつある。

これら傾向の違いは、国・地域あるいはそこで資産運用を行う投資家のサステナブル投資を含む金融やESGに関する制度・規制の整備状況、熟度、位置づけなどの違いを反映していると考えられる。

<参考文献>
1) Global Sustainable Investment Alliance (GSIA), 2012 Global Sustainable Investment Review, 41p, 2012.
2) Global Sustainable Investment Alliance (GSIA), 2014 Global Sustainable Investment Review, 31p, 2014.
3) Global Sustainable Investment Alliance (GSIA), 2016 Global Sustainable Investment Review, 28p, 2016.
4) Global Sustainable Investment Alliance (GSIA), 2018 Global Sustainable Investment Review, 26p, 2018.
5) 日本サステナブル投資研究所(JSIL),サステナブル投資とESG投資について,日本サステナブル投資研究所(JSIL)レポート,4p, 2016.
(http://jsil.asia/file/JSILNo.002.pdf, 2020年1月3日閲覧)
6) 大和総研,ESGとCSR ~期待される企業価値創造プロセスの開示~(EGS投資を考える 第4回),ESGの広場,4p,2016.(https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/esg-investment/20160122_010555.pdf, 2019年12月19日閲覧)
7) Julian F. Kölbel, et al., How Media Coverage of Corporate Social Irresponsibility Increases Financial Risk, Strategic Management Journal, 38, pp.2266-2284, 2017.
8) Jiuchang Wei, et al., Well Known or Well Liked? The Effects of Corporate Reputation on Firm Value at the Onset of a Corporate Crisis, Strategic Management Journal, 38, pp.2103-2120, 2017.


 

馬奈木 俊介(まなぎ・しゅんすけ)
九州大学大学院工学研究院 都市システム工学講座 教授/九州大学都市研究センター長・主幹教授

 

松永 千晶(まつなが・ちあき)
九州大学大学院工学研究院 都市システム工学講座 助教/九州大学都市研究センター 助教

 

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