五輪後見据えるスポーツクライミング カギは地方とアウトドアに

2020年はスポーツ普及の岐路になる。東京五輪の追加競技として選出されたスポーツクライミングを管轄する日本山岳・スポーツクライミング協会は、地元開催でのメダル獲得に向けてトップ選手の強化に励む一方で、すそ野を広げるための普及活動にも力を入れている。

2018年のアジア競技大会でスピードクライミングをする楢﨑 智亜選手(右)

高さ15メートル、5階建てのビルに相当する垂直の壁を5、6秒で登りきる。そのスピードと、一歩、あるいは一手を誤れば落下するスリリングな動きが人気のスポーツが、スポーツクライミングだ。管轄する日本山岳・スポーツクライミング協会によると、愛好者人口は60万人にのぼり、高さ4、5メートルの壁を持つボルダリングジムも過去10年で約5倍増加して全国に500軒前後あるとされる。

この競技の歴史は新しい。もともとはロッククライミングという登山の際の岩登りの技術がベースになっており、自然の要素を排してスポーツクライミングが生まれた。1989年のワールドカップが最初の国際大会で、1991年に世界選手権がスタート。2018年から「リード」、「ボルダリング」、「スピード」の3種目の順位を掛け合わせ、ポイントが少ない選手が上位となる現在の形式になった。

2人の選手が高さ15メートルの垂壁を登る速さを競うのが「スピード」、高さ4メートルの壁に設定された複数のコースを制限時間内にいくつ登れるかを競うのが「ボルダリング」、制限時間内にどこまで壁を高く登れるのか到達点を競うのが「リード」である。

日本はスポーツクライミング大国と言われ、有力選手が多い。W杯年間総合優勝4回、W杯通算優勝21回を誇る野口啓代選手や、2019年8月に東京・八王子で開催された世界選手権複合(3種目のポイントを競う)で優勝した楢﨑智亜(ともあ)選手は、世界的な名手として知られる。また12月、フランスのトゥールーズで開催されたIFSC(国際スポーツクライミング連盟)による東京五輪予選を兼ねた世界大会では、女子部門複合で17歳の伊藤ふたば選手が優勝している。

追加競技に選ばれて
変わった風向き

この競技が東京五輪の追加種目として実施競技に決まったのは、2016年8月だった。日本山岳・スポーツクライミング協会の専務理事、尾形好雄氏はその経緯をこう振り返る。

尾形 好雄 日本山岳・スポーツクライミング協会 専務理事

「2014年、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が中長期改革案として『オリンピック・アジェンダ2020』を掲げました。このなかで、2020年の五輪では若い世代に受け入れられる大会を目指すとして、夏季五輪競技種目28競技に加えて、アーバンスポーツを追加すると発表しました。そして第129回IOC総会で、追加競技として、野球やサーフィンとともにスポーツクライミングが提案されたんです」。

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