デンソーテン 社内の「和」を原動力に、CASE時代を勝ち抜く

「CASE(C=コネクティッド、A=自動化、S=シェアリング、E=電動化)」をキーワードに技術革新が進む自動車業界。デンソーテンは、CASEに対応できる製品群を揃えており、それが強みになっている。加藤之啓社長にCASE時代を勝ち抜くための戦略を聞いた。

加藤 之啓(デンソーテン 代表取締役社長)

CASE時代の到来はチャンス、
一方で危機感も

1920年に創立された川西機械製作所を源流に、戦後分離して設立された神戸工業を前身とするデンソーテン(本社:神戸市)。当時の通信分野では東の東京通信工業(現:ソニー)、西の神戸工業と並び称され、1973年ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈氏、2014年同賞受賞者の赤﨑勇氏も在籍した名門の流れを汲む。

以降もタクシー用FM無線機(1954年)、初代クラウンのオートラジオ(55年)、エンジン制御ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)(83年)、ナビ内蔵AV一体機「AVN」(97年)を初めて市場に送り出すなど、技術開発を先導して自動車関連業界で存在感を発揮してきた。

デンソーテンが開発したトヨタ初代「クラウン」用オートラジオ(1955年)。その製品の納入開始により、自動車産業に参入した

1997年、カーナビゲーションとオーディオビジュアルの一体機を、いち早く市場に投入した

CASE時代の到来を見越して2017年11月には、それまで富士通55%、トヨタ自動車35%、デンソー10%だった資本構成をデンソー51%、トヨタ自動車35%、富士通14%へと変更し、社名も富士通テンからデンソーテンへと改称。デンソーとの間で事業譲受も行いながら、設立以来40年余にわたって培ってきた事業の再構築を図りつつある。

そして2019年4月、それまで機能ごとに分かれていた部門を事業ごとに再編。TCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)や通信型ドライブレコーダー、フリート車両(タクシー・トラック・バス・リース・シェアリング車両など)向け配車・運行管理システムなどの「コネクティッド」、ナビゲーションやディスプレイオーディオ、車載音響システムなどの「CI(Car Infotainment)」、エンジン制御・パワーマネジメント・エアバッグなど各種ECU等を手掛ける「AE(Automotive Electronics)」の3事業本部制とした。

戦略策定の強化、事業責任の明確化など事業軸(企画~量産)でのマネジメントを推進し、経営のスピードアップを図っている。

2019年6月にトップに就任した加藤之啓社長は「CASEの時流に対応できる幅広い製品群を自社で揃えている企業は稀有」とデンソーテンの優位性を語る。ただその一方で、「CASEの時代は当社にとって大きなチャンスであるとともに、IT産業やGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)など自動車関連以外からの参入も増え、競争はさらに厳しくなる」と危機感を隠さない。

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