2019年10月号

スポーツの新ビジネス

訪日客の注目度No.1 体験型の武道ツーリズムで地域活性

月刊事業構想 編集部

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これまで本誌では地方創生のアイデアとして、地域の独自の魅力を観光と仕事に繋げる「趣味の街」構想を発信してきた。その中で、地域に人を呼び込む街づくりとして可能性を秘めているのが、武道ツーリズムである。

剣道の世界競技人口は250万人(うち日本では177万人)、日本でも各地で剣道のツアーが始まっている。

観光立国を目指す我が国では、訪日観光客は順調に増加しているものの、国内旅行は都市部を除いて宿泊施設の稼働率が低い地域が多く、今後は観光客の地域への呼び込みが課題だ。

しかし、都市部に比べて交通の便が悪い地域での観光事業は、遠くてもわざわざ訪れたくなる地域づくり、つまり地域の独自性を磨き上げることが必要であり、特定のテーマに関心の高い層を誘客する工夫が必要だ。

訪日客の注目度 武道がNo.1

そんな中、スポーツ庁ではスポーツツーリズム・ムーブメント創出を掲げて、スポーツと観光を掛け合わせた同事業の取組を推進している。同庁では2017年からこれまで2年間、マーケティング調査、官民連携協議会の形成、武道ツーリズムのプロモーション動画を発信、データの蓄積による関心客層の抽出などを行ってきた。

武道に注力している理由として、過去のマーケティング調査において、「訪日外国人が観たいスポーツ」という項目で、大相撲・サッカー・野球を押さえて武道が一位となっており、武道ツーリズムが潜在ニーズとして大きく注目を集めているためだ。2019年は更に戦略に基づいた施策の推進年と位置付け、ターゲットごとのプロモーション・誘客の仕組みの構築を進める方針だ。

ただし武道ツーリズムと言っても、柔道・空手・剣道など世界的に競技人口の多いものについては、ツーリズムではなく技術の向上などを目的に来日している経験者層もいるため、受け入れ側は対応を分けて考える必要がある。

一方で、居合道や手裏剣術など、海外からの関心は高いものの、予備知識なく体験する層が多いものについては、ある程度の寛容さも持ちつつ、少し時間を取って歴史や武道の礼節などを伝えられると良いだろう。

居合道は侍を想起させると訪日観光客に人気。体験の1つとして、試斬体験などが各地で販売されている。

地域ならではのチャンス

武道ツーリズムには三つの成功する可能性が地域にある。

1つ目に、潜在顧客が見えていることだ。訪日外国人の中ではリピーターも増加しており、より日本文化を深く体験したい層の増加が予想される。単に武道を観て道着をまとうだけでなく、実際に体験する商材にしていくことで、一人当たりの単価を上げていくことも可能だ。

2つ目に、供給側である地域に、資源が豊富なことだ。まず人的資源でいえば、剣道であれば少なくとも20万人以上の有段者が全国におり、柔道や空手も全国に指導者がいる。また、施設についても、武道ではある程度のスペースが必要なものの、私設の武道館であれば空き時間にツアーで活用したり、自治体の管理施設や研修施設、廃校などを有効活用するなどして、イニシャルコストを抑えることができる。

3つ目に、地域の観光資源との親和性が高いことだ。武道を体験することで日本の文化を深く知りたい層には、地域の食や風景、文化体験もセットにすることで、更なるブランド構築が図れるだろう。武道体験は2時間ほどで手軽に楽しむ程度に提供し、例えば書道体験やお寺での瞑想、日本家屋での民泊や家庭料理と掛け合わせてもいいだろう。地域で体験できるコンテンツの一覧を揃えることで、その街に一泊以上の滞在を促して地域全体の所得向上を図ることができる。

一般家庭の民泊先での料理体験。日本の家庭料理も関心が高い。

課題は地域の合意形成
まずは議論の場づくりを

こうして考えると武道ツーリズムに大きなチャンスを感じるが、一方で課題もある。

最も大きな問題は、地域の合意形成である。具体的には、武道とビジネスの両立だ。礼に始まり礼に終わる武道精神において、お金を稼ぐということに心理的な抵抗を持つ地域の意見も一定数あるだろう。この点は、自治体が明確にメッセージを出して地域を巻き込むことが必要だ。例えば地域協議会を組織し、武道関係者、寺社関係者、観光事業者、自治体、地域住民でコンソーシアムを形成することで、今までにない議論ができるはずだ。

地域として取り組む目的は何なのか。地域の所得向上のほかに、まちづくりの一環として、地域の人材育成や、交流人口の拡大、住民の健康増進など、様々なテーマが見えてくるはずだ。

プロジェクトを通じて
地域のリーダーを育成

具体的に進めるには、その地域の資源をたな卸しして、人的ネットワークや施設などで活用できるものを探し、顧客を想定したサービスを考える。

事業構想大学院大学では、「武道ヴィレッジTM」を構想・実践するためのカリキュラムを企画している。内容は、「スポーツ・武道ツーリズム/差別化戦略/ビジネス設計/民泊始動/地域の合意形成/地域資源のたな卸し/マーケティング/プロモーション/安全性」などの項目で作成している。

実装に向けては現地でワークショップを行い、地域の次世代リーダーの取組を支援しつつ、外部視点での助言を行う。この「武道ヴィレッジTM」を契機に、地域での新たなプロジェクトに取り組んでみてはいかがだろうか。

武道ヴィレッジのポイント

 

[お問合せ 事業構想大学院大学]
TEL:03-3478-8401

 

自治体首長、企画課、観光課の皆さまへ

Society 5.0 未来のまちづくりフォーラム
「スポーツのまちづくり~武道ツーリズムへの取組~」
スポーツ庁 参事官 地域振興担当
増井国光 氏 11月15日(金)9:30登壇

◆日 時  2019年11月14日(木)~15日(金)
2日間開催
◆テーマ  スポーツ/モビリティ/ヘルスケア/
防災セキュリティ/スマート農業 など
♦場 所 TEPIAホール(東京都港区北青山 2-8-44)
♦参加費 無料(事前登録制)
♦主 催 学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学 社会情報大学院大学

公式サイト https://www.mpd.ac.jp/event/20191114/
お問合せ先 TEL:03-3478-8401
Mail pjlab@mpd.ac.jp

 

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