日本企業のイノベーションに不足する「共感力」と「実験体質」
イリノイ工科大学のデザインスクールでプロトタイピングの重要性を肌身で感じた博報堂の岩嵜博論氏。日本企業が人間中心イノベーションを起こすために不足しているのは共感力と実験体質と指摘する。

「プロトタイピング」の一例。段ボールを使ってタブレットとテレビのインタラクションをシミュレーションする
前回は、私がイリノイ工科大学のデザインスクールで習得した、デザイン思考をビジネスに活用するための有効な手法であるプロブレムフレーミング、リサーチ、分析、統合(シンシシス)、プロトタイピング、コミュニケーションという一連のアプローチのうち、プロブレムフレーミングから統合までを解説した。
最終回となる今回はプロトタイピング、コミュニケーションについて触れ、そこから実際のビジネスシーンにおけるデザイン思考の応用、イノベーションのヒントを探るが、その前にプロブレムフレーミングから統合までを簡単におさらいしよう。
プロブレムフレーミングとは、企業自体や商品、サービスが抱える問題を特定すること。リサーチは、その問題を解決するための「インスピレーションのもとを得る」ことを目的としたもので、IDではデザインリサーチと言い表す。スコープを広げること、スコープ外のことも意識すること、対象を客観的に観察するのではなく、あたかもその対象者の気持ちになったかのような「共感(エンパシー)」をすることが重要だ。リサーチの結果は、信頼性を確保するために構造化、相対化し、ダイアグラムに落とし込む。
そして、デザインリサーチで得られたデータを一般的な手法で分析し、統合に至る。この統合という概念はIDの教育の中でも特徴的なもので、全く違う要素と要素をつなげて新しい価値を生み出す力を指す。デザインシンキングをするうえで、エンパシーと並んで不可欠の要素と言えるだろう。

プロトタイプ完成後はすぐにクラスメイトからフィードバックを受けることが大切
失敗がアイデアを磨く
この次の段階がプロトタイピングだ。試作品を作り、実験を繰り返す過程である。IDでは「Low fidelity, Early failure」という言葉がよく使われていた。「Low fidelity」とは精度が低いということで、「精度にこだわらずに短期間でプロトタイプを作って、早い段階で失敗して、そこから学んで次のステップに進みなさい」という意味になる。
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