観光ビッグデータの導入がカギ

経験則に著しく依存した観光戦略から脱却するには、どうしたらよいのか。数値データに基づく分析は有効だが、その性質を正確に捉えた適切な運用こそ、地域に根差し、人とお金の循環する観光地づくりにつながるのである。

清水氏の所属する首都大・観光科学域は、理工学のアプローチで観光を研究する国内では異色の組織で、科学的な政策・施策立案に貢献する人材育成に取り組んでいる。清水氏は観光系学術組織では十分に取り組まれていない統計解析・ビッグデータ分析の研究教育を行うほか、アジアから留学生を受け入れ、当地の交通インフラ整備に貢献できる人材を育成している。

観光ビッグデータの本当の意味

今日、従来の統計では収集できない顧客データへの期待が高まっている。ビッグデータはこうした期待の一部を満たすものだが、必ずしも万能ではない。観光で知りたいデータは大きく (1)産業活動、(2)周遊行動、(3)消費行動、(4)評価の四種類である。最近はモバイル端末のGPSを基にした位置情報データがよく用いられているが、それだけでは行動の要因を理解することは難しい。研究者としては「カード決済データ」を利用できれば理想的なのだが、一般にデータ入手が難しい。また決済システム自体が津々浦々に普及しておらず、決済にカードを利用するか否かは国籍差も大きく、アジアからの訪客の間ではまだ十分に浸透していない。SNSは評価情報の宝庫だが、投稿してくれる観光客にはまだ偏りがあるだろう。

ビッグデータは長期間にわたってデータを十分に蓄積しないと、地域や日時を細分化した際に標本数が小さくなりすぎて統計分析に堪えないし、ニッチマーケットの理解に不可欠な特異な行動を拾うことも難しい。ただ、上手に使えば統計では分からない「ばらつき」は十分に把握できる。既存統計との長所を組み合わせることが当面は重要なのかもしれない。

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