複々線が2018年に完成し、構想50年の輸送力増強を成し遂げた小田急電鉄。20年度末の中長期経営計画が終わるタイミングでコロナ禍となり、現在、次代の新戦略を構想中だ。同社が目指す「社会課題を解決しながら新たな価値を創る事業」について、執行役員としてリードする久富氏に話を聞いた。

久富 雅史(小田急電鉄株式会社 執行役員 経営戦略部長)
日本の縮図のような沿線で
未来を描く課題解決に挑む
「鉄道会社の将来的ビジネスモデルを考えるための新たな経営ビジョンについて経営陣と2018年から対話を始めましたが、想定の変化がコロナ禍で一気に足元に来ました。社会課題の解決に資する新規事業創造と社内の風土改革を並行しながら進めていきたいです」と語る小田急電鉄の久富氏。同氏が率いる経営戦略部は2016年に発足。中途入社組やグループ会社などからの出向者、社内の事業アイデア公募制度「climbers(クライマーズ)」でアイデアが採択されたメンバーに社外人材も加わった、約40名の多彩な顔触れが特徴だ。
「新規事業を実践する姿勢を全社に示すには、旗を振る経営戦略部が動くのが一番です。チームには数年前まで鉄道保守や駅係員をしていた人もいて、手前味噌ながら社員のポテンシャルの高さを感じています」
同部が推進するのは、2018年発表の「未来フィールド」構想だ。小田急沿線は新宿を起点に大都市や郊外住宅地から、江の島・箱根などの観光地まで多彩な都市構造を持ち、日本の縮図のようにエリアごとに多様な社会課題を抱えている。そこで小田急のありたい姿として、太い幹となる「わくわく×イノベーション」から枝分かれした先に、事業領域と顧客価値を掛け算した「モビリティ×安心・快適」「まちづくり×愛着」「くらし×楽しさ」「観光×経験」のテーマが生い茂る木のイメージを描いた。

一本の生い茂る木で表現した「未来フィールド」
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