SDGsとプラスチック業界 社内改革から目指す次代の事業構想

SDGsのように高い理想を掲げて事業を進めるとき、社内外の"壁"の打破に苦しむ経営者・担当者も多いだろう。ごみ袋メーカー大手・日本サニパック代表取締役 井上充治氏は従来の体制を改革し、プラスチックを巡る環境が大きく変わる中、次の50年に向けた事業の創造を目指す。

井上 充治 日本サニパック代表取締役

山積する課題を矢継ぎ早に改革

日本サニパックは1970年創業のごみ袋メーカーで、マーケットシェア1位の企業。業界内で唯一自社工場を持ち、国内市場に向け製品を供給してきた。

井上氏が親会社の伊藤忠商事から社長に就任した2015年、同社を取り巻く環境は非常に厳しいものだった。ごみ袋市場は力のある大手小売業が主たる顧客であり、価格転嫁が難しい。同社はかろうじて営業損益ベースでプラスマイナスゼロであったものの、同社を含む大手6社を合計した業界全体では赤字。マーケットは過当競争で疲弊していた。

さらに社内も課題が山積。計画的な設備投資が行われず老朽化した工場と本社オフィス環境、採用抑制による社員平均年齢の上昇、モチベーション低下などだ。

井上氏はまず"採算性の向上" "設備投資"の観点から社内の改革・環境整備を実行する。商品単価やコストと最終損益の数値を社内で共有して意識を高めるとともに、オフィス環境の整備を行った。こうした施策の結果、社長就任初年度の純利益は目標を大きくクリアし、2年目には過去最高益を更新。この単年度計画の達成は、当初から重要視していたものだという。

「外部から社長となった私が社内からの信頼を得るために、結果にこだわりました。中長期の大きな戦略の実践につながるためです」

さらに、就任から5年を経た2020年秋に大規模な組織改編も実施。改革と組織・人事の改編時期をずらし現場の混乱を防いだ。海外工場の刷新や社員主体のプロジェクトの積極展開、同業他社との業務提携など次々に手を打つという積み重ねの成果もあり、2020年度の純利益は14年度比で15倍に達する見込みとなっている。

変化の時代に "50年先"を見据える

同社は2020年、周年事業の一環で、ミッション策定と企業理念・ロゴの変更を行った。井上氏が社長就任時から「50周年を迎える年に、社員の気持ちを込めたものをつくりたい」と温め続けていた考えだ。掲げられたスローガンは"きれいな地球と、きれいな心を"。日本の衛生環境改善を支えた縁の下の力持ちという創業時からの歴史に対する誇りと自信を示すものであると同時に、今後はこれに魂を入れ、企業行動として実践していく。

就任以降、順調に経営を進めてきた井上氏だが、急激に変化するビジネス環境の中にあって、従来の延長線ではいずれ立ち行かなくなるという強い危機感があると話す。創業から50年を迎えた今、この先の50年をどう見据えるのか。

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