マイクロツーリズムの時代、地域連携が国際観光都市への試金石

今回の新型コロナウイルス禍で本当に怖いのは、今後やってくる世界的な大不況だろう。人間の生活に本当に必要な事業は残るだろうが、不要なサービスは厳しくなると考える。ではツーリズムはどうだろうか? 観光は不要なサービスなのだろうか?

谷島 賢(イーグルバス 代表取締役)

バブル崩壊後の危機を
「安・近・楽」のアピールで突破

弊社は過去2回大きな不況を体験している。最初は平成2年、日本のバブル崩壊である。平成元年に念願の観光バス認可を取得し、多額の車両投資をしたばかりの弊社は仕事が全く無くなった。

思案の末、川越の観光興しを開始した。当時川越はまだ観光地として知名度はなかったが、「小江戸ばす」という川越のバスツアーを考案し、思い切ってTV宣伝したらヒットして窮地をしのいだ。

本丸御殿前で夜間に撮影した電気バス

続いて平成7年に川越市内の観光地を結ぶ観光路線バス「小江戸巡回バス」の運行を開始し、ボンネットバスを導入したところ、多くのメディアに取り上げられ、多くの観光客がバスに乗りにきてくれた。

しかし、当時の地元の人々は観光に対してはまだ懐疑的で、弊社の様子見という態度だったが、不景気な世相の中、「安・近・楽」というキーワードが流行り、川越がまさに、安くて、近くて、楽しい観光地として脚光を浴びたことで川越の観光地としての歩みが始まった。

地元有志のイベント開催で
「絆」をアピール

次の不況経験は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災である。川越も鉄道とバスがストップして観光客が途絶えた。春祭り直前であったがすべてのイベントは自粛となった。この時、危機感を持った地元有志で自治体に頼らないイベントを立ち上げた。各実行委員会が立ち上がり、毎月18日を「きものの日」と制定し、茶道の流派を超えた大茶会が開催され、夜の蔵町でライトアップイベントを開催した。弊社もメンバーの一員となって取り組んだ。

この時制定された「きものの日」によって今では着物姿の観光客をたくさん見るようになった。大茶会もライトアップイベントも同様に継続している。この時のキーワードは「絆」であった。この時に作られたイベントが川越の魅力を広げ、観光客が大幅に増加する要因となった。弊社でも事業改善を単独で行う個別施策から、地域と連携して観光興しを行う包括政策への転換機会となった。

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