馬場正尊氏が語る コロナ後の公共空間、パブリックの行方

コロナ禍のような生命の危機に向き合うと、人間は本能や身体感覚に素直になっていく――。そう語るのは、公園や学校など数々の公共空間のデザインを手掛けているOpen Aの馬場正尊氏だ。そして馬場氏は、本能に直接訴えかけるような居心地の良い公共空間にこそ、また人が集まると語る。

公園のようなオフィスで働く

――コロナ禍でOpen Aの働き方は、どのように変わりましたか。

馬場 原則的にはリモートワークに切り替えていますが、事務所自体は開けています。徒歩圏内に住んでいる社員も多いので、広いスペースを求めてちらほら作業しに来るような状況です(取材の4月時点)。

馬場 正尊(Open A 代表取締役/建築家/東北芸術工科大学 教授)

Open Aの事務所のコンセプトは「屋根のある公園で働く」。もともとオフィス空間がパブリックスペースのようになればいいと考えていて、公園やカフェ、芝生の上とかで子どもが遊んでいる姿を見ながら、その横で仕事をするようなことをイメージしていました。まずは自分たちを実験台にして、新しいオフィス空間を実践しようと思い、倉庫をリノベーションして今の事務所をつくったんです。

天井が高く広いので子どもたちが遊びまわったり、共有キッチンがあるのでみんなで料理をしてご飯を食べたり、シェアオフィスにもなっているので社外の人たちも交えてワイワイ話したりして、案外そこで面白い発想が生まれたりする。また、一人暮らしよりも設備が充実しているので、休日に来て料理をしたり遊んでいる人もいます。

Open Aの事務所のコンセプトは「屋根のある公園で働く」。そこでは、子どもたちが遊びまわったり、みんなで料理をしたり、社外の人たちとの交流が育まれるなど、「オフィス」や「公園」、「家」の境界が溶け出した空間がつくり出されている

そうなってくると、オフィス空間と公共空間、プライベート空間の境界が無くなっていって、仕事をしなければならないからオフィスにいるのではなく、自分が今この瞬間こうしたいからこの場所にいるという感じになっていく。今、世の中の空間には「オフィス」や「公園」、「家」や「学校」など、固定された名前・概念が紐づいていますが、もうその呪縛から解き放たれて、空間を再定義しなければいけないのかもしれない。

今回、コロナ禍でリモートワークが増えて、たくさんの人が「家」と「オフィス」の概念のあいまいさに直面し、空間の境界が溶け出していることに否応なく気づかされました。

これからは空間も時間も、仕事専用、遊び専用、生活専用などの既存のゾーニングから離れて、仕事の合間にちょっと遊び、くつろぐとか、モザイク状に組み合わせた暮らしをする人が増えるのかもしれません。

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