2020年3月号

実務家教員による大学教育

実務家教員養成の2つの誤解 虚像の実務家教員像

川山 竜二(学校法人先端教育機構 社会情報大学院大学 研究科長・教授)

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実務家教員養成を掲げていると、「実務家にはさまざまな領域があるので同時に様々な実務家教員を養成できるのか」と質問を受けることがある。この質問には2つの誤解が含まれている。実務家教員養成の上でのポイントを今一度、整理することにしたい。

実務家教員に関する誤解

実務家教員に必要な能力は、実務能力、教育指導力、研究能力の3つである。この能力については、いたるところで述べている。実務家教員そのものは、文部科学省の「高等教育の無償化」や「専門職大学」などで注目されている。

ここでよく問題とされるのは、要件であるからといって、むやみに実務家教員が大学の授業を担当することである。しかし制度的な趣旨は実務家教員ありきなのではなく、教育課程上の必要から「科目」が設置されており、その「科目」を担当するのに実務経験をもった教員が適切であるから実務家教員が授業を受け持つのである。さらに教育課程に実務家教員がもつべき科目を無理やりつくるのでもない。実務家教員がもつ授業のメリットは、研究者教員とは違った視点から授業を展開することであり、履修生に対して重層的な思考を提供することにある。

そうすると実務経験があるからといって、何でも授業が持てるわけではない。担当する科目にあわせた実務経験をもつ実務家教員でなければならない。たとえば、「会計監査」の授業であれば、内部監査の経験をもつ実務家教員が担当するのが適切かもしれないし、「学校組織論」のような授業であれば、実際に研究者教員が教学マネージャーとしての職責経験を5年以上積んでいれば実務家教員としてカウントすることが適当である。

いずれにせよ、科目と実務経験が結びついていなければ実務家教員の意味はない。では、実務家教員が担当すべき「科目」が必要なのかという点である。それは社会と教育機関(大学)との関係になる。教育機関そのものとしては、社会から求められる人材を養成することが役割である。となれば、社会からなぜ「実務家教員」が求められるのかを説明しなければならないだろう。それは次回取り上げることになる。

実務家教員養成に関する誤解

第二の誤解にも触れておこう。実務家教員養成を掲げていると、「さまざまな領域の実務家がいるなかで、同一のカリキュラムでよいのか」という質問を受ける。つまり科目や実務経験の領域によっては、教え方などが異なるのではないかということだ。

すなくとも、実務家教員に共通の必要な教育指導力はある。たとえば、大学教員にはFD(教学力の向上についての研修と考えていただくとよい)がある。FDでは、どの専門分野でも授業計画(シラバス)の立て方や教育手法についての研修もあるし、FDを研究する大学教員による研究も進んでいる。実務家教員にも少なくとも共通のFDと同じような研修の機会は必要なのである。

 

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