地域プラットフォーム型の観光事業 観光資源を地域全体で最大化
公平性が重視される地域の共同体では、独創的な観光振興が難しい。オリジナリティーを打ち出すほど、特定の人や事業者が受益者となるためだ。三重県の山間にある大台町では、独自の取組でこの問題を解決した。
社会学者のギー・ドゥボールと哲学者のアガンベンは1980年代の末に、マルクス主義の残滓こそが新しい政治への接近にとって主たる障害となっている1としていたが、この「マルクス主義」を「公平主義」に替え、さらに「政治」を「観光事業」に替えるならば、まさに地域発の新しい観光事業を妨げる私たちの教条的なメンタルモデルを言い表している。
分かりやすく言うならば、特に観光協会などを主とする公共的な事業主体は、地域に於けるあらゆる資源の優先順位付けとそれらに関わる関係者の扱いを、公平・平等、さらには公益性という名の元に収益性よりもそれらを優先させようとするが、それがかえって事業目的のフォーカスを定めることを困難とさせ、差異化・独創性・新規性のない極めて凡庸な観光事業だけが再生産されていく現実を、一方ではつくり出しているのである。
そうしたことを認識させてくれたのが、三重県大台町2でアウトドア・ゲストハウス「宿屋 まてまて」を運営するVerde大台ツーリズム3の代表取締役である野田綾子氏だ。
大台町は奥伊勢と呼ばれる大自然に恵まれた広大な県南部に位置する景観保全地域であるが、人口はわずかに9000人を数える程である。そんな過疎化の進む町に、野田氏はこの2年間で2000人以上の観光客(宿泊客を含める)を誘致した実績を誇る。
アウトドアプログラムが
直面した壁
2013年に愛知県豊田市からご夫婦で移住された野田氏は、生来の活動的な人柄を見込まれて大台町観光協会に2014年より参画する。
体育教師の経験を持ちスポーツへの理解も深い彼女は、そうした知見を活かして同年9月に大台町全体をフィールドとした「Verdeアウトドアプログラム」の主催運営を開始した。
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