地方創生へ、自治体SDGs推進 指標の活用で持続可能なまちづくり

SDGsの取組期間が開始して3年あまり。政府の政策強化や経済界の活動と共に、地域や中小企業、スタートアップもまた、その枠組を事業に組み込むことが有効である。持続可能なまちづくりを実践するためのローカライズの手法を、第一線の専門家たちが語った。

地域活性化のツールとして、なぜSDGsは重要なのだろうか。全国でSDGs達成に取り組む自治体関係者を主な対象として、4月25日に発刊された書籍『SDGsの実践 自治体・地域活性化編』を分担執筆した5名の専門家が、各担当章のエッセンスを紹介し、そこに込めたメッセージを伝えた。

なぜ、地域・自治体が
グローバル目標に取り組むのか

村上周三氏は、建築環境の整備と流体工学を専門とし、内閣府による自治体SDGs推進評価・調査検討会の座長も務める。国連サミットで2015年9月に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に関し、村上氏は、「世界共通に直面する社会課題を網羅し、2030年への方向付けを示す、優れた理念」と肯定的に評価しつつ、全貌が分かりづらく法的拘束力もないうえ、具体的なインディケーター(指標)が未整備であるという問題点を指摘する。講演では、自治体のとっての必要性を概観し、建築環境・省エネルギー機構で開発に取り組む幾つかのインディケーターを紹介した。

村上周三 建築環境・省エネルギー機構 理事長、東京大学 名誉教授

「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物を環境性能で格付けする指標です。このCASBEEを使うと、環境・経済・社会の各観点から地域のパフォーマンスが分かります。例えば、同じ関東・関西・中部地方でも、経済指標では最も良好ながら環境指標は最下位といったように、多様な側面を持つことが分かります。この状況に照らすならば、自治体は、自らの特性を踏まえた独自性の高い施策を講じる必要があります」(村上氏)。

社会全体で、上下水道・通信・交通・教育といった公共サービスは、財源と担い手の縮減により、都市力の低下が危惧されていると言われる。SDGsを自治体に導入することで、ローカル・アイデンティティを確立でき、地域活性化につながると期待される。更に企業にとっては、新たなビジネス機会の創出や経済・社会双方の価値向上につながる。

「自治体はチャレンジに値するSDGsを行政ツールとして活用するためには、目標群としての17のゴール、169のターゲットを特性に照らして編み直し、利用可能なシナリオを描く必要があります。私はインディケーターの整備と合わせ、ローカルな行政現場に落とし込む『翻訳』の参考としていただくうえで、幾つかのガイドライン策定を行っています」。

地方創生に向けた
SDGsの推進

「日本政府のアクションプランで『SDGsを原動力とした地方創生』は、Society 5.0、次世代女性のエンパワーメントと並ぶ、三つの柱の一つとして位置付けられています。日本の人口が2010年をピークに急速な人口減少へ向かうなか、地域の活力を維持し高める起爆剤としてSDGsの活用が期待されています」(遠藤健太郎氏)。

遠藤健太郎 内閣府 地方創生推進事務局 参事官

第2期が2018年12月頃に閣議決定される「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を見据え、内閣府は2018年6月に29都市を「未来都市」として選定。更に、SDGsが目指す経済・環境・社会の三側面へ統合的に取り組むうえで、相乗効果の高い10事業をモデルとして選定し、全国に展開しうる好事例を探っている。

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