デザイナーが自ら「売る」 デザイン会社のビジネスモデル転換
兵庫県垂水を起点に活動するトランクデザイン代表の堀内康広さんは、デザインの力で産地のよいものを再編集し、全国に伝える伝道者だ。自ら店舗を運営するなど独自の手法で、デザイナーの新しいビジネスモデルと、産地にお金がまわる仕組みを作っている。
文・矢島進二 日本デザイン振興会堀内氏は、1981年に兵庫県灘で生まれ、学生時代は垂水で育ち、現在も垂水を拠点に活動をしているデザイナーだ。垂水は三ノ宮から15分の距離にある海辺の住宅街。堀内氏は「この町から"新しい未来の地図"を描きたい」と静かに語り始めた。
高校時代から大手ピザ屋でアルバイトをし、店長代行として店舗経営の基礎を学び、サービス業の面白さを経験する。デザイン専門学校を卒業し、印刷会社にデザイナーとして入社。製作だけでなく、社長の右腕として生産性や組織マネジメントなどを行う。
26歳の時にショッピングモールのプロモーションのコンペを勝ち取り独立。それを機に百貨店の家具部門からも声がかかり、ブランディングを含めた広告宣伝、販促の仕事を受け、2008年に「トランクデザイン」を起業。同時に、オリジナルTシャツなどを販売する5坪の路面店からスタートし、2009年に現在の場所へ移転。
地域にとけ込むデザイン店
現在の事務所は、兵庫のものづくりを集めたアンテナショップ。ガラス張りの路面店で、コーヒーのテイクアウトができ、店内には活版印刷機もある。
デザイナーが自分で店を持つ意味について尋ねると「まちの大工さんのように、気軽にデザインを頼めるお店を作りたかったのです。近所の人が自分のロゴやウェブを作りたい、内装を変えたい、そんな小さなことを語れるような場を」。実際にふらりと来た方からデザインの依頼も多々入るという。
また、デザイナーが店を持つことで、デザインした地場商品などのBtoC的な販路が得られ、売ることまで含めた循環を手にできる。実際に堀内氏は、例えば職人から布を買い取り、自分で縫製会社に発注し服をつくり、自ら売る事業を実践している。このモデルであれば職人に確実にお金がまわる。
デザインを地域のために
なぜ堀内氏は、産地密着型のデザイナーにシフトしたのだろうか。/p>
兵庫県は、マッチや線香の国内生産量約8割のシェアをもつエリアだ。だが、消費量は減少し、地場産業としての存続は危ぶまれている。
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