2018年12月号
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パイオニアの突破力

20代でチームを立ち上げ監督兼経営者に Vリーグ観客動員数1位に躍進

笹川 星哉(VC長野トライデンツ監督 チーム運営会社社長)

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国内男子バレーボールリーグ(Vリーグ)は、1部から3部までの3リーグで構成される。トップである1部リーグ(V1)に今年、2チームが昇格。その1チームがVC長野トライデンツだ。新体制で挑む2018-2019シーズンのVリーグは、10月26日に開幕したばかり。トライデンツ監督・笹川星哉は、男子バレーボール人気を再燃させるべく、新たな風を吹き込む。

文・油井なおみ

 

笹川 星哉(VC長野トライデンツ監督 チーム運営会社社長)

長野で最初のトップリーグ
所属チームを目指す!

33歳の若さにして、今年、Vリーグ・1部リーグの監督となった笹川星哉。最年少監督ではあるが、最短距離を来た訳ではない。

高校卒業後、実業団チーム『NEC長野』で活躍したが、2008年、リーマンショックの影響でチームが解体。22歳にして、引退を決意したという。

「でも、自分が勧誘した若い選手たちがいて。まだ19とか20歳の選手たちを放っておくわけにいかず、チームを立ち上げたんです。僕が選手兼監督の同好会のような、たった8人の小さなチームですが(笑)。でも、当初から目標は“長野県初のVリーグ1部リーグ・チームになる”でした」

とはいえ、資金も支援もないチームでは体育館も思うように借りられない。できるのは、体育館の周りを走ったり、空いている駐車場でパスの練習をするくらい。ユニフォームも買えず、地元の小さな大会にさえ出られなかった。世は不景気で、スポンサーを探しても、門前払いばかり。笹川は思い切って、自分の勤め先の『ジェルモ』の社長室のドアを叩いた。

「ただの社員でしたから、社長と直接話したことなどありません。でも、当たって砕けろで、“ユニフォームを買ってください”とお願いしたんです」

当然、最初は相手にされなかった。しかし、諦めずに何度も訪ねると熱意が通じ、社長が自腹でユニフォームを買ってくれたのだ。自分たちも地域リーグの登録料50万円をこつこつ貯め、2012年に初参戦を果たし、東部決勝リーグで4位入賞。Vリーグへの道が少しずつ見え始めた。しかし、Vリーグの正式加盟には大きな課題があった。

「運営母体がないと加盟できなくて。それで13年に一般社団法人『VC長野クリエイトスポーツ』を設立し、僕がチームの監督兼運営会社代表となったんです。会社を辞めてやっていけるのか不安はありました。『ジェルモ』の社長は“社員のままでやればいい”と引き留めてくださいましたが、それではけじめがつかないので退職して、チームに専念したんです」

そんな笹川を見て、社長は個人的に3年間の事務所の無償貸与と年300万円のスポンサーとなってくれたのだ。

「“頑張ってるやつは応援したいから”と言ってくれて。選手のためにも、社長のためにも、絶対にトップリーグ入りしようと身が引き締まりました」

「誰かのために」と思うことが
自分を強くする

「自分は一度、バレーボールを投げ出しているんです」

中学生で全国優勝を経験した笹川は、高校のバレー部でも全国を目指した。

「こういう練習をしようとか、それじゃだめだとか、1年から率先して動きました。それが煙たがられて、高2で退部したんです。その後は“アウトロー”です。母には心配をかけました」

あるとき父親が“分かってあげられず悪かった”と土下座してきたという。

「驚きました。そのとき両親が“バレーボールに打ち込んでいた中学生の頃は輝いていた、自慢の息子だった”と言ったんです。その言葉を聞いて、これまでいつも両親が支えてくれていて、自分の活躍を喜んでくれていたんだ、と気づいたんです」

以来、何をするときも、その背景にいる人のことを考えるようになった。

「当時を振り返ると、自分のやりたいことばかり押し付けて、周りが見えていなかったんですね。何事にも“相手”がありますから。僕の原動力は今も“親を喜ばせたい”というのがいちばん。さらに今は、選手や応援してくれる人たちのためにと思うと、監督業と社長業のプレッシャーに心折れそうなときも、気持ちが奮い立ちます。ユニフォームが買えず社長に嘆願しに行けたのも若い選手たちには好きなバレーを諦めさせたくないと思ったから。“誰かのために”という思いは、なりふり構わず、突き進める力になります」

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