2013年8月号
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商品開発の舞台裏

若者を動かした生ビール・イノベーション

田代美帆(キリンビール マーケティング部 商品担当)

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第三のビールをはじめとした新興商品の攻勢、若者のビール離れなどビールを取り巻く環境は厳しい。このような環境下において、「飲み方提案」という切り口で、一定の市場開拓に成功した商品がある。

商品開発のきっかけとなった ある女子学生の言葉

近年、若者の車離れ、旅離れ、音楽離れ、テレビ離れなどがいわれているが、ビール業界にとって最大の課題も同様、若者のビール離れである。20代前半の若者層は、家族間、上司や同僚とビールを飲む機会が確実に減少している様子であるが、リサーチをすると、ビールが嫌いということではなく、ビールを飲むきっかけがないという状況が見えてくる。

はずみをつけるにはどうすべきか。

キリンビールは2012年夏、「生ビール・イノベーション」を目標に、一番搾りフローズン<生>を市場に投入した。特徴は、冷たさが30分保たれる点であり、新感覚のビールとして若者や女性を中心に人気を博している。

開発者の田代さん自身が若い女性。

学生時代に、福岡ドーム(現福岡ヤフオク!ドーム)でビール販売のアルバイトをしていた経験がある。ビールを通して初対面の人たちが喜びを分かち合い、盛り上がる様子に触れて、「ビールは人生を豊かにする」と確信した。

身近で手軽なコミュニケーションツールであるビールの存在と良さを若者に理解してもらい、浸透させるために田代さんが取り組んだのが、ビールの「現代化」だった。今生きている時代感覚で若者の飲用スタイルを見ていく中、まず注目したのは、仲間と話しながら飲むという習慣である。一番搾りのブランド担当に着任した当初、女子大学生と飲む機会があり、その際に聞いた「ビールは飲んでいる間にぬるくなるから嫌い」という言葉に衝撃を受けた。

キリンビールの社員は、ぬるくなる前に飲み終わっているのが当然で、社内でそのような発想を聞いたことがなかった。そこで、「若い人にも女性にも、最後まで冷たいままおいしく飲めるビールを作ろうと決心した」。

他の飲料から得た発想

ビールといえば、仕事帰りのサラリーマンが居酒屋でジョッキを片手に飲む姿が想像される。この限定的なイメージがビールの活躍を閉鎖的にしていた。解決のヒントを得たのは、他の飲料業界だという。例えば、コーヒーは10年前であればサラリーマンがタバコを吸いながら喫茶店で飲むというイメージが定着していた。しかし現代の若者に尋ねると、スターバックスやドトールといった大手カフェチェーンが挙げられるだろう。持ち歩きできる容器やおしゃれな外観だけでなく、カプチーノやソイラテなどの気軽なコーヒー飲料が、閉鎖的な空間を一変した。

まさにコーヒーの現代化である。

また、酒業界では、ハイボールが現代化の代表である。ウイスキーはバーで静かに飲む大人のものだったが、ハイボールの登場によって、ウイスキーは若い女性が気軽に居酒屋で飲めるお酒に変身した。ビールも、おしゃれで気軽に楽しめるはずだ。ここから「発着想」が始まった。

「冷たいまま」の商品特徴を、飲む前に伝えるには、ビジュアル化がポイントとなる。ソフトクリームのような泡、斬新な見た目。一度目にすれば、飲んでみたくなる。シャリシャリした新食感で冷たくスムーズな口当たりで、最後のひと口まで楽しむことができる。

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