「食」のR&D最前線

食品総合研究所は、農林水産省傘下の農研機構に属する研究機関だ。研究分野は「食品安全」、「食品機能」、「食品分析」、「食品工学」など7つの領域にわたり、約100名の常勤研究者が所属。現在、企業との共同研究は約70件にのぼる。

大谷敏郎
農業・食品産業技術総合研究機構
食品総合研究所所長

安倍内閣の成長戦略の一環として、農業の6次産業化が言われる中、農産物の付加価値を高める新たな加工技術・製品の開発が期待されている。食品産業にそうした"種"を提供し続けてきたのが、農林水産省傘下の研究機関である独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)に属する食品総合研究所だ。

古くは清涼飲料や缶詰、パンなどで砂糖の代わりに使われる「異性化液糖」、パンの製造工程に大変革をもたらした「冷凍耐性酵母」、発酵食品に含まれる、糖質ゼロ、カロリーゼロの天然甘味料「エリスリトール」、最近では「複数食中毒菌の迅速同時検出技術」などが、その研究成果の代表だ。

大谷敏郎所長は、「当研究所は農産物の流通・加工を経て、食卓に提供されるまでの範囲を研究対象としています。したがって、食品の持つ機能の研究から、流通・加工に関する先端技術の開発、基礎的なバイオテクノロジーと研究領域は幅広くなっています」と語る。

企業との共同案件が70件

現在、企業と共同で研究を進める案件は約70件を数える。

一例として、圧力センサーにより食品を咀嚼するときの筋電図を測定し、どこに力がかかるかを解析。あるいは「パリパリ感やグニャグニャ感」など、人がおいしいと感じる食感を咀嚼計測から評価する。こうした嗜好機能の評価は、高齢者向け食品や乳幼児向け食品の開発には欠かせないという。

製品化が進む技術もある。その一つが、アクアガスによる加熱・調理加工技術だ。アクアガスとは過熱水蒸気中に微小(あるいは微細)な水滴が分散したもので、伝熱効率が高いことが特徴だ。たとえば、ブロッコリーなどを短時間で処理すると生に近い食感や色彩などを保持して殺菌を行うことができる。病院給食施設などで試行的に利用され始めている。

現在、機械メーカーとの共同研究で、コストダウンや様々な用途に対応したアクアガス装置を開発中だ。

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