2013年8月号
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食ビジネスの進化

TPPで「日本の食」に地殻変動

山田正彦(元農林水産大臣)

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日本の国益を左右する重大案件でありながら、一向に実像の見えてこないTPP。今回、このテーマに関して、米国通商代表部をはじめ、米国側との太いパイプを有し、日本で最も広範かつ最新の情報を持つとされる山田正彦・元農水大臣に話を聞いた。

──関税撤廃の例外が認められるか否かに関し、現状はどうなのか?

安倍首相は、農産物5品目(コメ・麦・牛肉・豚肉・乳製品)について、「関税撤廃の例外が認められる」と主張し、国内の農業関係者も安心しているが、実態は異なる。

今年4月、米国通商代表補のカトラー氏に直接質問したが、コメですら7年間で関税を完全撤廃し、ましてや他の品目については例外などあり得ないと明言してした。それどころか、米国側は「日本との間では、食料品・農産物についての問題はすべて解決済みである」という認識を持っている。

食の安心・安全はどうなる?

──では、上記の農産物5品目を含む各種農産物が日本に入ってきたとき、いったい何が起きるのか? まずは、食の安心・安全という面からお聞きしたい。

アメリカでは、従来、家畜用の大豆やトウモロコシには遺伝子組み換えを行っていたが、今後は、人が食べる小麦についても行うことになった。TPPによって、それが日本に入ってくる可能性がある。

また、日本では、これまで、BSE感染事例のほとんどない月齢20ヵ月以下の牛肉に限って輸入していたが、今年2月、米国からの圧力により、この規制は緩和されてしまった。

遺伝子組み換え成長ホルモンで育てられた牛も入ってくるだろう。ヨーロッパでは、発がん性があるとして禁止されているものだ。

あと、ジャガイモ。米国では、収穫後のジャガイモに放射線を当てて芽が出ないようにしているが、日本では従来それを禁止していた。しかし、これも入ってくるだろう。

──しかし、日本の生活者の「食の安心・安全」への意識の高まりが、現在のような原産地表示の厳密化、さらには生産者氏名の公表など、トレーサビリティを、より徹底する方向へと向かわせている。TPPによって、米国からどんなに危険な農産物が入ってきても、生活者が自ら防衛することで、実害は避けられるのではないか?

いや、それは違う。原産地によって差別を行うのは非関税障壁に当たるということで、TPP参加後は、原産地表示ができなくなる。

しかも、BSEが発生したとしても、ラチェット条項という、一度決定した内容を後戻りさせないことを定めた規定によって、これまでのような米国産牛肉の輸入禁止措置が採れなくなる。

危機に瀕する日本の食文化

──ということは、TPPに参加することで、日本の生活者は、牛肉、小麦、ジャガイモをはじめ農産物を購入するに際し、国内産か外国産かを知ることもできず、安全への不安を感じながらも、それを購入せざるを得なくなるということだ。それは、視点を変えるならば、日本の国産品であっても、産地表示ができなくなることを意味する。そうだとすれば、松坂牛、神戸牛をはじめ、日本の食文化を築いてきた地域ブランドの消滅につながるのではないか?

TPPに参加した途端に消滅するわけではないが、段階的にそうなっていくことは否定できない。

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