2013年7月号
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特別寄稿

なぜ今、事業構想なのか?

東 英弥(事業構想大学院大学 理事長 博士(商学))

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前回は、そもそも事業構想とは何か、なぜ今、事業構想なのか、そして、今求められる事業構想とはどのようなものか、ということをご紹介した。

そして、その中で、私は、「日本の再生・発展ということを考えるならば、イノベーション・レベル、ならびに、ソーシャル・アントレプレナーシップ・レベルの高い事業構想こそが必要である」ことを強調した。

そこで、今回は、それを踏まえて、実際に事業を構想するに際して、イノベーション、ソーシャル・アントレプレナーシップという2つのファクターを、「発・着想」から「マーケティングコミュニケーション」までのプロセスの、どの段階で、どのように織り込んでいくべきか、ということを含め、各段階のポイントをご説明したいと思う。

「社会を視る眼」が構想の前提

事業を構想するに当たっての大前提は、「社会を視る眼」である。

私は、出張でよその土地に行ったら、必ず自転車で街を周遊する。車で仕事先とホテルを往復するだけは決して見えてこない、その土地の姿を体感できるからだ。

その土地に暮らす人々の息遣いを感じ、彼らの暮らしぶりに思いを馳せる。市場やスーパーに行き、どんな物がいくらくらいで出回っているか、どういう物が好まれているかなどを感じ取り、食べ物であれば、自分の舌でそれを確認する。

地元の美術館にも行き、歴史を探訪し、路地裏を探索し、あるいは風に吹かれて自然との一体感を感じてみる。

そういう行動の中で、2つのことが見えてくる。

ひとつは、時代の変化への微かな予兆である。古来、「些事に神宿る」と言われるように、一見、取るに足らないように見えることの中にこそ、物事の真実が宿っているものだ。

一地方都市であっても、その「空気」を肌で感じることを通じて、やがて大きな環境変化へとつながる小さな変化を感じ取ることができる。

ふたつ目は、現代日本社会が抱える構造的な問題が、思わぬ形で露呈しているのを目の当たりにし得るということである。「人々がこんなことで、これほど深刻に困っているとは思わなかった」とか、「人々がこんなことで歓びを感じるとは!」という「気づき」を得ることができる。

環境変化の行く末を肌で感じながら、日本社会として解決すべき問題の所在を知る。こうした「社会を視る」体験の積み重ねの上に、初めて、自分なりの「現状認識」「問題意識」が醸成され、そこに事業構想への「発想」も生まれ得るのである。

世の中には、いかにして「ムダ・ムラ・ムリ」を排除するかに血道をあげる人々がいる。たしかにそれが必要な場面もあるだろう。しかし、いつも、いつも、スピードや効率ばかり追求していては、より重要なことを見失ってしまう。

ただでさえ、仕事に追われていると、自分の業界の目の前の現実にしか関心が向かない「近視眼思考」や「視野狭窄」に陥りがちだ。

少なくとも、日本の再生と発展につながる事業構想を志すのであれば、ここで述べたような「社会を視る」ということを日々の生活の中で習慣づけることが大切であろう。

「発想」から「着想」への展開

「発想」とは、アイディア、閃きである。曇りのない目で社会を視つづけ、その中で醸成された問題意識から発想は生まれる。

しかし、閃きは、時と所を選ばない。私は夜、寝る時、もう数十年もの間、必ず枕元にペンとメモ帳を置いている。寝ようと目を閉じている時、あるいは夢の中で閃くことも多いからである。美味しいお酒を飲んで親しい人々と談笑している時も、ペンとメモ帳は絶えず忍ばせている。こういうテンションの上がっている場面では特に閃きやすいからだ。

換言するならば、事業構想のアイディア、閃きを得たいと思うならば、24時間体制で、それに備えておく必要がある。

業務時間外でも、本人が「本気」で、「やる気」に満ちている限り、本人も知らぬ間に、脳は絶え間なく考え続け、ふとした瞬間に、アイディア、閃きを創出するのだから。

それに対して、「着想」というのは、私の考えでは、上記の「発想」をどう生かせば"社会の一翼を担えるか〟まで考慮したものである。

たとえば、「東南アジア出張の時に現地でよく食べるあの美味い魚を、日本でも食べることができると楽しいだろうな」と閃き、個人的にトキメキを覚えるのが「発想」だとすれば、「あの魚を生きたまま日本に運んでお客様に提供できれば、日本にいながらにして現地で食べるのと同じ味が楽しめ、多くの人々に喜んでもらえるのではないだろうか」というのが「着想」ということになる。

「発想」+「ソーシャル・アントレプレナーシップ」=「着想」である。

「構想案」

事業を構想する場合、大企業の新規事業開発担当者であれば、「企業理念」や現社長の「経営理念」、また、それらを踏まえた「長期ビジョン」などが前提として存在する。したがって、上記の「着想」を、事業の骨格としての「構想案」へと発展させるに際しては、そうした理念群の指し示す方向に沿ったものとならざるを得ない。

それに対して、地方の老舗企業などの事業承継(予定)者の場合には、代々伝承されてきた「創業訓」や「家訓」などで、「守るべき方向性」が抽象的かつ緩やかに示されているケースが多い。「構想案」は、概ね、それに適合した方向に向かいやすい。

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