2013年6月号
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特別寄稿

なぜ今、事業構想なのか?

東 英弥(事業構想大学院大学 理事長 博士(商学))

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昨年4月開学した事業構想大学院大学も、お陰様で初年度を無事に終え、2年目のスタートを切ることができた。その間、産業界はもとより、各方面から予想を超える反響を頂戴し、この大学が、まさに時代の要請に応えたものであるという確信を深めている。

しかし、同時に、事業構想に焦点を当てるというアプローチが、今までにない全く新しい切り口ゆえに、未だ十分に理解されていないと感じることがあるのも事実である。

そこで、新年度を迎え、新しい院生諸氏が入学されたこのタイミングで、改めて、「事業構想とは何か? そして、なぜ今、事業構想なのか?」ということを、できるだけわかりやすくご説明したいと思う。

事業構想とは何か?

事業構想という概念を、わかりやすく表現するならば、「アイディアが閃く瞬間から、事業計画作成直前の、自分なりの事業の"理想形"が姿を現わす瞬間までの、思考・リサーチ・コミュニケーションの一連のプロセス」である。

それを私は、「発・着想→構想案→フィールド&マーケティングリサーチ→構想計画→マーケティング・コミュニケーション」という概念図で表現している(図表「事業構想の枠組みと流れの概念図」参照)。

実際の事業計画作成、ならびにそれ以降の活動は、言うなれば「事業の実施プロセス」であり、20世紀中葉以降、欧米を中心に経営学が主たる研究対象としてきた領域である。それに対して、本学が主に対象とするのは、あくまで、上記の事業構想の一連のプロセスであり、そこにこそ、我々の独自性・異質性・新規性が存在する。

では、なぜ、旧来型のアプローチではなく、事業構想に特化したアプローチを採用するのか?

1991年のバブル経済崩壊以降、デフレ不況下、企業活動は停滞し、とりわけ地方経済は疲弊し切り、それと併行するように我が国のグローバル社会でのプレゼンスもまた低下していった。

こうした暗澹たる状況からの脱却を図り、日本経済の再生を実現してゆくために必要なこと。それは、グローバル展開する大企業はもちろんのこと、日本の全企業数の9割以上を占める全国各地の中堅・中小企業が、活力に満ちた成長軌道に乗ることではないだろうか?

かねてより私は、日本のすべての地域において、「職を求めるすべての人が就業できる状況、つまり40~60代の方々が田舎に帰っても、ちゃんと仕事のある社会を作りたい」と言ってきた。そのためにも、全国津々浦々の企業が持続的に発展してゆくことが肝要だ。

しかし、全国各地の企業経営者の方々と話す中で、私は、それを妨げる、ある大きな問題が存在することに気がついた。

それは、せっかく事業のアイディアを閃いても、それを自分なりの事業の〝理想形〟へと転換してゆく術をもたないために、そのまま死蔵し、時代の流れの中で消えていっているケースが非常に多いということである。

「経営者は孤独だ」と言われるが、実際、同じ立場で相談をしたり、アイディアを練磨したりするコミュニケーションの相手がいないために、〝理想形〟にまで発展させることができないケースが特に目立つようだ。

「失われた20年」の苛酷な環境変化の下で、企業や地域の起死回生に結びつく可能性のあるアイディアの数々が、陽の目を見ることもなく儚く消失し、それが結果として、各企業、そして各地方の衰退、ひいては日本全体の低迷につながっているとすれば、由々しき問題であろう。

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