想像力で頂に挑む
登山家といえば、無骨で屈強なイメージがある。その固定概念を覆すのが、竹内洋岳だ。外見はスタイリッシュ、語り口は知的でソフト。そんな竹内は、登山を「想像のスポーツ」と語る。8000メートル峰全14座を制した男の登山観とは?
プロ登山家、竹内洋岳。
竹内は、2012年5月26日、ヒマラヤ山脈にあるダウラギリ山に登頂し、世界の8000メートル峰全14座を踏破した初めての日本人となった。
命がけで14座を登ってきた男といえば、近づきがたい気迫やオーラを感じそうなものだが、竹内にはそれがない。人当たりはソフト、語り口は知的だ。
竹内の言葉を聞いて、その理由がわかった。彼は登山を「想像のスポーツ」と表す。「登山に前回の経験を持ち込むというのは非常に危ないし、つまらない。山に登っていると、過去の経験がぜんぜん役に立たないことがわかってきます。だから、経験は積まずに並べて、広げていく。そうやって、知識を得ていくんです。数多くの経験をすることで、想像がよりリアルになっていきます。いかにリアルに、こと細かく、多方向で、多重で、人よりもいっぱい想像できるかどうか、山の中でみんなで競い合うのが登山です。そうやってあれこれ想像することが楽しいんですよね」
竹内は登山を、最後まで抜かりなく想像することができた者だけが山の頂に立つことができる頭脳的なスポーツとして捉えており、1人のアスリートとしてそれを楽しんでいるのだ。そこに登山家=山男という武骨なイメージは当てはまらない。
竹内の言うように登山が「想像のスポーツ」だとすれば、良い登山家は想像力が豊かだ。
しかし、自然を相手にする限りは、人間の想像が及ばないことも起こり得る。竹内は、山で2度も死にかけた。
脳梗塞と雪崩で重傷 2度の死地からの生還
1度目は、まだプロ登山家になる前の05年5月、ICI石井スポーツの社員として、仕事を休職して参加した登山での出来事だった。友人であり登山パートナーのドイツ人登山家ラルフ・ドゥイモビッツ、オーストリア人女性登山家のガリンダ・カルテンブルンナーと3人で、エベレストを登頂中に突然意識を失い、倒れたのだ。
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