楽天が持つ自治体支援のポテンシャル ふるさと納税後発自治体の挑戦

宮崎県の都農町と川南町は楽天とタッグを組み、納税先として「選ばれる自治体」へと着実に成長を続けている。ふるさと納税の後発組が打ち出した戦略とは何か。両町のふるさと納税を担当する二人の行政マンが振り返った。

楽天の可能性に賭けた宮崎の熱き行政マン

日向灘に面した宮崎県のほぼ中央に位置する都農町と川南町。人口1万人ほどの小さなまちながら、今やふるさと納税で多額の寄附金を集める自治体に成長している。近年は、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」への食材供給でも話題となり、県内有数の食の宝庫としてもその名を知られるようになった。

両町のふるさと納税への本格参入は意外にも遅かった。南国・宮崎の太陽を浴びて育った自慢のトマトやワインなどの特産品を携え、両町は2014年に専用ポータルサイトを導入したものの、その道のりは決して平坦ではなかったという。都農町総合政策課、課長補佐兼まちづくり推進係長の山本貴士氏は当時をこう振り返る。

「クレジットカード決済を導入したことで寄附額は伸びてはいたんです。しかし、ランキング上位はすでに先発組で占められ、なかなか太刀打ちできない。せっかく品質の良い商品を出しても、寄附者の目に触れずに埋もれてしまうという歯がゆい状況でした」

なかには乗り遅れを取り戻そうと、いたずらに高額な返礼品を増やす後発組も少なくないが、山本氏がこだわるのは、あくまで商品の魅力で勝負することだ。新たな一手を模索する中、山本氏が耳にしたのは、楽天が2015年7月にふるさと納税事業に新規参入するという情報だった。

「あの楽天が参入、と聞いて思わず飛びつきました。国内最大級というECの市場規模と抜群の知名度は申し分がない。楽天なら自分もよく利用しているので、親しみやすさや安心感もある。一方、寄附者からすれば、楽天市場での買い物と同じ流れでふるさと納税の手続きが行える利便性と、寄附金額に応じて楽天ポイントが付与されるお得感もある。これだけのメリットが揃っているなら、楽天の可能性に賭けてみようと思いました」。早速、山本氏は近隣の川南町と楽天の自治体向けセミナーに参加し、同年8月からの導入を「ほぼ即決」で決断したという。

左:山本貴士 都農町 総合政策課 まちづくり推進係 課長補佐 兼 係長
右:高山尚己 川南町 総務課 ふるさと納税係

レビューを活用してPDCAを効果的に回す

両町が導入する「楽天ふるさと納税」最大のメリットは、レビューを通じて寄附者の声を収集できる点にある。たとえば、返礼品で人気の肉はボリュームも受注を左右するが、1kgを送っても家庭では一度に食べ切ることが難しい。そうした生の声を聞くことで、小分けパックに切り替えたり、飽きずに食べられるようにアレンジ料理のレシピを同封するなど、両町の事業者がサービスや商品開発にレビューの意見を活かし、大きく寄附を伸ばした例は枚挙にいとまがない。

川南町総務課、ふるさと納税係の高山尚己氏は「これまでは寄附者の満足度が分からず、送って終わりになっていた部分もあった」と率直に振り返った上でこう続ける。

「楽天の導入をきっかけに、『いいモノだから買ってください』ではなく、『これなら寄附が増えるという工夫』のしどころを探るようになりました。改善するとレビューの星の数が増えて、さらにまた寄附が増えるようになる。そんなPDCAが上手く回り始めています。事業者が同じ商品でもサービス一つ変えるだけでこんなにも評価は変わる、という手応えを得られるようになり、明らかに意識が変わっています」

さらに、高山氏は「楽天のエリアリーダーからきめ細やかなコンサルティングが受けられる」という点も楽天の大きなアドバンテージだと言う。

「アクセス数に対して商品が売れる確率を『転換率』と言いますが、転換率のデータから課題を抽出し、売上アップの戦略をアドバイスしていただきました。正直なところ、初めは自分でページを作るなんて難しそうだし、そんなことで変わるのかと半信半疑でもありました。ところが、ブログと同じ要領で簡単にページが作れましたし、アドバイスを聞きながら改善すると、ランキングがみるみる上昇していくのを目の当たりにしたのは衝撃的でした。申し込まれるまで待ちの姿勢でいるのではなく、自らアクションを起こせば寄附金額が上がるということを身をもって学びました」

新たな賑わいを創出している「道の駅つの」。ふるさと納税に関する特産品の発送業務を担っている

まちの魅力を伝えるために楽天市場への出店を目指す

わずか1年でランキングの常連となった両町では、返礼品の生産・販売を通じて新たな雇用が生まれ、法人化する事業者も現れ始めた。慢性的な過疎に加え、とりわけ2010年に発生した口蹄疫の被害で疲弊していた生産者が息を吹き返し、まち全体に明るいムードが漂うようになったという。

「都農町では、集まった寄附金で事業者の人材育成も行なっています。これにより寄附金がもっと集まることで、さらなる雇用が生まれるという好循環が起こっています。この流れを受けて、定期的に事業者同士で集まって返礼品の商品開発をしたり、地域住民の間で商店街の再生計画も話し合っています」と山本氏。寄附金額を追い求めることを悪とする向きもあるが、大事なのは波及効果が見込める事業にお金が使われることではないか。

寄附金額を追い求めたからこそ見えてくる次なる展開を尋ねると、山本氏は都農町として楽天市場に出店することだ、と即答した。「都農町には素晴らしい特産品がたくさんある。これらの魅力を伝えるのが行政の仕事です。それゆえ、出店料を自治体が負担することも検討しています。なかでも、出遅れた感のある海産物をPRしていきたいと考えています。都農ワインで味付けした独自開発のカラスミを、7月から返礼品に追加したのですが、高級珍味だけに都心部の方にこそ試していただきたいですね」

高山氏も「Iターン・Uターンの促進も目指しています。川南町にいても稼げるんだということを、楽天のECサイトで証明したいですね」と意気込む。ふるさと納税を基点とした都農町と川南町のまちづくりは今、始まったばかりだ。

川南町の町商店街で毎月開催される朝市「軽トラ市」。毎月1万人の観光客が訪れ、ふるさと納税事業者も多くが出店する

 

お問い合わせ

  1. 楽天株式会社 楽天市場事業 ふるさと納税事業グループ
  2. TEL:050-5817-7775
  3. Mail:ichiba-furusato-nouzei@mail.rakuten.com
  4. URL:http://event.rakuten.co.jp/furusato

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