2021年7月号
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サイバー文明の夜明け

信頼される企業だけが生き残る DX時代に蓄えるべき資源とは

國領 二郎(慶應義塾常任理事、慶應義塾大学総合政策学部教授)

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デジタル化による社会構造や規範の変化を“文明の転換”と捉えて新たな文明における経済や経営のあり方を考える本連載。今回はサイバー文明における「富」のあり方を考察する。長らく私たちが求め、社会問題の種にもなってきた金銭は「信頼」にその地位を譲ろうとしている。

技術が変える富の姿

本シリーズ第2回(2020年11月号)で、デジタルで提供されるサービスに働く経済原理と、モノで供給される財やサービスの経済原理は大きく異なることを指摘し、デジタル化を単なる新しい技術の登場であることを超えて、近代工業文明からサイバー文明への転換点であることを主張した。そして「文明」が、中核となる富、技術、統治構造などで形成される社会構造や規範のパターンであると考えたときに、金銭の蓄積が富の蓄積と同義とならない新しい富が出現することを示唆した。

図1 新たな文明の登場?

出典:筆者作成(画像出典:Wikipedia)

 

たとえばロボットが人間の労働を完全に代替して物質的欠乏から解放してくれたり、人間のニーズを慮ってカスタマイズした生活サービスを提供したりしてくれるような時代が来たときに、人間は何を生きがいとして生きていくのだろうか? そこまでのことを言わないまでも、このシリーズで見てきたように、経済主体が労働や財やサービスを交換することを通じて貨幣的価値を蓄積することを富と見なせる時代が終わった時に、人間は何を成功の指標としていくのだろうか。人々が目標として働き、時に争い奪い合う富の姿が変わりうるところが、デジタル化による社会変化が文明の変化と呼ぶだけの大きさのものとなる理由と言っていい。

少し長い人類史の視点から見たときに、主要な技術によって生産手段が変化する中で、何がその文明の富になるのかが変化してきたと理解することができる。たとえば、農耕文明は金属による農機具の発明によって、食糧の備蓄を可能とすることによって、倉に納められた食糧を富とした。日本においても江戸時代までは「石高」が国力を表す指標とされていたことを考えると金銭よりも貯蔵食糧が富の中心だった時代の方が長い。

工業文明の登場がこの状況を大きく変えたのは本シリーズ第2回で述べたとおりである。すなわち、第二次産業革命はエネルギーを原動力として、商品(モノ)の大量生産と、出来上がった商品の安定的大量輸送を可能にした。結果生まれたのが、大量生産された商品をより広い商圏で販売するビジネスモデルだ。そのモデルがトレーサビリティの低さゆえに、所有権と金銭を交換する市場経済モデルとなったことも解説した。現代では富裕の尺度は金銭となっている。工業文明においては金銭を持っていれば、たいていのものを買うことができるからだ。

図2 先立つ文明

出典:筆者作成(画像出典:Wikipedia)

 

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