特許・商標・著作権... 係争事例に学ぶトラブル回避・対応策

新事業立ち上げ・起業時に知っておくべき「知財」の基礎知識を、知財啓発の第一人者である稲穂健市氏が解説する本連載。今回は知財にまつわる係争事例から事前の備えや、もしもの際の対応を考える。権利の発生・取得の際にポイントとなる要件を押さえておくことが重要だ。

今回は、知財に関する係争事例を通じて、どのように自己の知財を守っていくのか、また、他者との知財トラブルにどのように対処すべきなのかについて考えることにしましょう。

権利発生の要件を押さえる

まず、登録が権利発生の要件である産業財産権については、登録可否を巡って特許庁と争いになることがあります。以前も少し触れましたが、産業財産権にはさまざまな登録要件があります。たとえば特許権の場合、対象が「発明」(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)であること、「新規性」があること(新しい発明であること)、「進歩性」があること(容易に発明されたものではないこと)などが必要です。出願人が特許庁での審査や審判の結論に納得がいかない場合は裁判となります。

たとえば、ステーキ専門店「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスの特許「ステーキの提供システム」(特許第5946491号)については、特許庁の審判では「自然法則を利用しておらず発明に該当しない」と判断されたものの、知財高裁では、特定の物品等が課題解決のための技術的手段であるため自然法則を利用しているとして、特許性を認める判決が出ました。ただし、業績不振により接客方法にさまざまな変更を加えたことで、現在のシステムはこの特許ではカバーされていません。

今年3月31日に閉店した「いきなり!ステーキ」の1号店(銀座四丁目店) (筆者撮影)

商標にもさまざまな登録要件があります。商標は自分の商品・サービスを他人のものと区別するための目印であることから、きわめて簡単な文字・図形といった識別力(区別する力)がないものは原則として登録できません。また、公益性に反するものや、他人の商標・業務との関係で紛らわしいものも登録できません。ただし、判断の難しいものについては、先ほどと同様、裁判で特許庁の判断を覆せる可能性はあります。

権利範囲の設定が重要

権利帰属や権利侵害などを巡る当事者間の争いもあります。何の根拠も正当な理由も持たない第三者が他人の知的財産権を侵害すると、権利者はその行為の差し止めや、その行為によって生じた損害の賠償を求めることができますが、交渉が決裂した場合、裁判になることが多いです。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り65%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。