2021年5月号
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事業開発に生かす知財の知識

キヤノン・ホンダ・カシオに見る 知財を活かした海外進出

稲穂 健市(弁理士、東北大学 特任准教授)

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新事業立ち上げ・起業時に知っておくべき「知財」の基礎知識を、知財啓発の第一人者である稲穂健市氏が解説する本連載。第3回は知財を活かした海外展開の際におさえておくべき点と実務面の手法・留意点を解説する。グローバルな戦略視点を持ち、先手を打つことが重要となる。

知財の「属地主義」とは?

これまで、著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権など各種の知的財産権の概要と、その活用の一端について触れてきました。今回は知財を生かした海外進出について考えてみたいと思います。

じつは、知財には「属地主義」という、「法律の適用範囲を一定の領域内についてのみ認めようとする考え方」が採用されています。たとえば、日本の著作権や特許権などが及ぶ領域は原則として日本国内のみであり、同様に、米国の著作権や特許権などが及ぶ領域も原則として米国内のみということになります。

もっとも、著作権については、ほとんどの国において、著作物の創作と同時に権利が発生する「無方式主義」が採用されていることから、世界の主要国が加盟する「ベルヌ条約」の加盟国であれば、その国民によって創作された著作物は各国間で互いに保護されることになります。ですから、あなたが小説を書いたり絵画を描いたりしたとき、特に何の手続きをしなくとも、世界のほとんどの国で著作物としての保護が受けられます。映画や音楽などのコンテンツを海外展開する際、その海賊版対策は求められますが、権利発生のための手続きは特に必要ないということです。

ただし、各国で権利の効力や存続期間が異なることがある点には注意が必要です。たとえば、ある著作物について日本国内でその保護期間が満了していない場合でも、他国でも同じとは限りません。

“先手”が重要な産業財産権

また、著作権とは異なり、産業財産権については、各国で別々に権利発生のための手続きが必要です。日本で特許権や商標権などを取得しておけば、ある国から侵害品が日本国内に入ってきた場合、差し止めや損害賠償の請求をすることができますが、その国でも同様の権利を取得しておかないと、少なくともその国では侵害品は野放しとなってしまいます。そのため、自社製品を外国市場でも展開するのであれば、その国でも特許権や商標権などを別途取得する手続きを進める必要があります。

もっとも、外国の官庁で権利を取得する手続きは、そう簡単ではありません。実務的には、「工業所有権の保護に関するパリ条約」の「優先権制度」を活用して、自国に出願してから1年以内(意匠や商標の場合は6カ月以内)に外国に出願する手法がよく用いられます。自国での出願に基づき優先権を主張して外国に出願すると、自国での出願時を基準に特許性が判断されるため、外国に出願するまでの間に、発明の内容が公になったり、第三者が同じ内容を特許出願したりした場合でも、不利な取扱いを受けることがなくなるのです。

また、「特許協力条約(PCT)」などの国際条約を利用し、世界各国への出願手続きを一度で済ませることも可能です(図)。ここで注意すべきは、手続きが一度で済むというだけで、原則として、審査と登録は各国で別々に行われるという点です。そのため、「国際特許取得」などを売り文句にしている企業がコンタクトしてきたら、その特許の実態について詳しく調べておく必要があることは言うまでもありません。

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