ビッグデータ時代のビジネスに必須の条件「ネットワーク外部性」

デジタル化による社会構造や規範の変化を"文明の転換"と捉えて新たな文明における経済や経営のあり方を考える本連載。今回からは情報技術が経営に与える影響を考察する。数が増すほど価値が高まる「ネットワーク外部性」は、顧客や商品に関するあらゆるデータに生じている。

「ネットワークの外部性」とは?

前回まで3回にわたってトレーサビリティを支え、進める技術の展開について語ってきた。今回から3回ほどは情報技術が経済や経営に与える影響について考えるうえでカギとなる概念をいくつか紹介したい。

1つめがネットワークの外部性(network externality)だ。ネットワークの経済性という表現をするときもある。ネットワークの外部性とは、ある財やサービスについて利用者が増えるほどその財から受けられる利便性が高くなる現象、と表現することができる。

具体的なネットワーク外部性の例を出したほうがわかりがいいと思うので、古典的な(ユーザーを一対一でつなぐ)電話サービスを例に考えてみよう。思考実験のためにネットワーク参加者が他の参加者と「つながりうる可能性」を価値1だと仮定してみる。すると、世の中に電話サービスのユーザーが1人しかいないときは、そのネットワークには何の価値もないので、価値ゼロである。ユーザーが2人いるとつながりが1つできて価値1となる。面白いのは3人目のユーザーが現れたときだ。つながりが3つとなるから、そのネットワークの価値は3ということになる。つまり一人のユーザーが増えるだけで、価値は2つ増える。4ユーザーの場合のつながり数は6で価値が3つ増える(図1)。以後、5ユーザーの場合はつながり数10で価値増分4である。このように、ユーザーが増えるにつれて級数的につながりが増えていく(数学的にはn(n-1)/2のつながりができていく)。個々のユーザーの視点からはつながりうる相手の数が級数的に増えて価値が加速的に高まっていくということになる。

図1 ネットワーク外部性

出典:筆者作成

 

「規模の経済性」と何が違うか

ネットワーク外部性がもたらす産業的な帰結として重要なのが、規模が大きいサービス事業者に圧倒的な力をもたらすことだ。GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と呼ばれるような巨大なプラットフォーム事業者を生み出したという意味で、ネットワーク外部性の産業的な意味は非常に大きいと言える。

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