日本酒メディア運営のClear M&Aで免許取得、ECへ参入

「日本酒の未来をつくる」というビジョンを掲げ2013年に創業したClear。EC事業立ち上げに際し、大手メーカーの酒も販売できる旧酒販免許にこだわり、酒販店を買収した。様々な関係者を巻き込みつつ、時間をかけてM&Aを進めた経験を同社社長の生駒氏が語った。

生駒 龍史(Clear代表取締役CEO)

2013年の創業来、日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES(サケタイムズ)」を育てたClear。次なる事業として取り組んだのが、Eコマース(EC)事業への進出だった。メディアの運営を通じて培った全国各地の酒造メーカーとのネットワーク、マーケットへの知見を、実際の販売に生かすものだ。日本酒の消費が「安価な日本酒を大量に消費するスタイル」から「高品質なお酒を少しずつ嗜むスタイル」へと変わりつつありながら、そのニーズに業界が対応しきれていない現状をふまえ、高価格市場を形成する必要性を痛感。嗜好品としての日本酒の魅力を多様な形で打ち出そうと、酒蔵と共同開発した高価格オリジナル日本酒に特化したECを開始した。

ECサイトSAKE HUNDREDで販売している高級日本酒のラインナップ。フラグシップの「百光」は山形県の楯の川酒造が製造している。右端が沢の鶴の熟成日本酒「現外」

様々な規模の酒蔵との事業で
旧酒販免許が必要に

ECで日本酒を販売するには「通信販売酒類小売業免許」を取得する必要がある。この免許は比較的容易に交付を受けることができるが、扱うメーカーに制約が設けられている。具体的には、前会計年度の品目ごとの「課税移出数量」が3000キロリットル以上の国内酒造メーカーが製造する酒類は扱うことができない、と定められており、日本酒業界ではいわゆる大手、準大手に位置する蔵の酒は販売対象から外さなければならない。

この制約を受けない方法としては、1989年5月以前に発行された酒類小売業免許、通称「旧酒販免許」を企業買収を通じて取得する、という手がある。ネット通販大手のAmazonが2014年4月に酒類のネット販売をスタートさせた際には、旧酒販免許を持つ酒販店を買収している。

「Clearでも、メーカーの規模に関わらず魅力的な日本酒を販売したいと考えていました。もちろん大手メーカーとの共同開発も選択肢に入っていたのです」と、Clear社長の生駒龍史氏はいう。そこで、旧酒販免許を取得すべくM&Aの手法を活用することを考え、2017年末頃から酒販店の情報を集め始めた。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り65%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。