製薬会社対決 武田薬品工業vs大塚HD

今、世界の製薬会社では、コロナ禍収束に向けた模索が続く。一方で、人々の健康を守るための通常の研究開発も、もちろん止めるわけにはいかない。業界売上高1位の武田薬品工業、2位の大塚ホールディングスの動向を見る。

ますます高まる、巨大製薬企業2社への期待

米国ファイザーの新型コロナウイルスのワクチンが2月にも国内で承認され、2月下旬からいよいよ国内での接種が始まる見通しだ。英国アストラゼネカでは2020年9月から、米国モデルナでは今年1月から、国内での臨床試験を開始している。また、国内企業でも、バイオベンチャーのアンジェス、塩野義製薬の2社による臨床試験が進行中だ。モデルナのワクチンの国内臨床試験を担うのは武田薬品工業で、同社は米国ノババックスのワクチンについても、原液から国内製造する。

国内製薬企業売上トップの武田薬品工業は、2019年にアイルランドの製薬大手シャイアーを買収したことが大きな話題になった。同社によれば、この買収は、研究開発型のバイオ医薬品企業を目指す変革の一貫で、米国など主要市場での競争力拡充に向けた規模拡大が狙いだ。同時に、希少疾患、血漿分画製剤、消化器系疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)という、同社の4ビジネスエリアのうち、消化器系疾患とニューロサイエンスの領域も強化された。

今後、研究型の製薬企業への期待がますます大きくなる、という認識のもとで同社が展開する様々な取り組みの中でも特に注目されるのは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との提携による共同研究プログラムT-CiRAプロジェクトだ。2015年からの10年間、iPS細胞技術の臨床応用に向けた研究を行い、再生医療や創薬における革新を目指す。今年1月も、iPS細胞から大量の再生T細胞を培養する方法を発見するなど、企業と大学の連携が着々と成果をあげつつある。

国内製薬企業売上において武田薬品工業を追うのは、大塚製薬などを中核とする大塚ホールディングスだ。2021年に創業100周年を迎える同グループは、2019年度を初年度とする第3次中期経営計画において、医療関連事業と機能性飲料などを中心とする「ニュートラシューティカルズ関連事業」をコアに、大塚ならではの新領域開拓や未充足な医療ニーズの解決などを目指している。

医療関連事業は、統合失調症やうつ病治療薬などが牽引役となって、2019年度連結当期利益が前期比約54%増と好調が続く一方、ニュートラシューティカルズ関連事業の「ネイチャーメイド」などの3本柱を、それぞれ1000億円規模にする構想を進める。病気の予防と、病気になってからの治療という両輪体制を充実させることで、トータルヘルスケア企業としての存在感を高めていく計画だ。

コロナ収束はもちろんのこと、収束後も続くであろう健康や未病、安心・安全な暮らしへの関心に製薬各社がどのように対応していくのか、国民の注目度はこれまで以上に高まっていくはずだ。大型製薬企業の持つ総合的な技術力と、グローバルな研究開発ネットワークが生み出す成果にかけられる期待は大きい。

両社概要

武田薬品工業

設立 1925年(創業1781年)
本社 東京都中央区(グローバル本社)
代表 クリストフ・ウェバー( 代表取締役 社長CEO)
資本金 1兆6,681億円
従業員数 47, 495名
事業内容 医薬品等の研究開発・製造・販売・輸出入
グループ会社 ●国内:シャイアー・ジャパン、
武田コンシューマーヘルスケア、日本製薬、天藤製薬 他
●アメリカ:Takeda Canada など13社
●ヨーロッパ:Takeda Austria など30社
●アジア:Takeda(China) Holdingsなど17社

出典:同社ホームページ、有価証券報告書

 

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