クラウドとプラットフォーム 規制の論点から見る今後の趨勢

デジタル化による社会構造や規範の変化を"文明の転換"と捉えて新たな文明における経済や経営のあり方を考える本連載。今回はデータ活用の基盤であるクラウドとプラットフォームの観点から、次代のビジネスのあり方に迫る。サイバー文明社会で企業が考慮しておくべき論点とは。

データを生かす鍵・プラットフォーム

前回はセンシングとネットワーク技術の進化によってトレーサビリティ(追跡可能性)の範囲が大きく広がっていることを示した。これらの技術によって、ヒトやカネそして情報なども含む広範囲のモノ(オブジェクト)の時空間上の位置が捕捉可能となる。

ただし、単に捕捉可能というだけでは「追跡」可能とはならない。捕捉された情報がそれぞれの場所にだけ止めおかれたり、バラバラの場所につながらない状態で保存されたりしていると、時系列にオブジェクトの位置がどのように移動していったかなどが把握できないからだ。それらのデータは少なくともネットワーク上で連結可能な形で保管され、管理されなければならない。

そこで重要になってくるのが、クラウドとその上に構築されるプラットフォームだ。クラウド上にデータを置くことで、異なるセンサーで異なる時間・場所で集められたデータも集約することが可能となり、特定のモノを追跡する態勢が整うことになる。それを誰にでも見せるわけにはいかないので、クラウド上に構築されたプラットフォームサービスの上で管理を行って、権限のあるものだけが見えるようにすることになる。

データをつなげ、関連性を発見する

データがクラウド上のプラットフォーム上に置かれることの今一つのメリットは、一つのモノだけでなく、多くのモノの追跡情報を照合することが可能となることだ。食品安全などでのトレーサビリティを応用して事故原因の究明や被害拡大阻止を図ろうとした場合、単一のモノだけを追いかけるのではなく、複数の食品が「交差」した場所を特定することが有効であることが多い。たとえば事故を起こした複数の食品が同一の日に同一の倉庫にあったことがわかれば、その倉庫の管理に問題があった可能性を特定することができる。そして、その倉庫に同一日にあった他の商品に影響があったか否か、追跡して確認することができる。関係したモノの移動履歴を重ね合わせて交差点を見つけることで、オブジェクト間の関連性を発見することができるのである。

図 追跡情報の「交差点」に「発見」が生まれる

出典:筆者作成

 

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