2021年2月号
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知が創る未来ビジネス

「知」とは一体何か 知財戦略の本質を見つめ直す

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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本連載は1年半にわたり、知財戦略な根源的で本質的な意味や、見えない資産とその活用の重要性、イノベーションの本質などを解説してきた。最終回にあたり、改めて知の本質と知財戦略の本質に思いを巡らせたい。

「知」の本質とは何か

いったい「知」の本質とはなんなのでしょうか?情報も知であり、情報や経験の集大成である知識、そしてアイデアや知恵も知です。本連載を始めるにあたり、知財戦略の様々なケースを中心にお伝えしようかと思っていました。一方で、多くの経営者の皆様や大学院の院生と接する中で、知財戦略とは特許や知財権のことだという認識が強いことを実感し、もっと根源的で本質的な話を伝えようと、この一年半を費やしてきました。併せて、21世紀の事業や経営において、見えない資産とその活用の重要性を述べてきました。

Singularityと知

情報という知からは、様々なことが分かり、未来もある程度想定できるようになってきています。未来だけでなく、過去も、今までの経験則だけでなく、より理論的に、その成功や失敗の要因を分析し、未来に生かせるようになってきているのです。一方で、情報という知の量は、幾何学的に増加しています。それらの知を理解するには、人の脳の力だけでは限界があるため様々なアルゴリズムを使った分析が不可欠で、情報→分析→解決策→実行→情報というループを有機的に繋げて高速回転するために、今流行の言葉で言えば、AIとかDXを必要に応じて使うことに繋がっているわけです。ここで重要なのは、必要に応じて使うのであって、必要が無ければ使う必要はないということです。情報という「知」を使うとは、あくまでも、何か目的があって使う手段に過ぎません。

一方で、知識や知恵もとても重要な知です。Singularityに向かって走っている世界の中で、人々は多くの労働から解放されてきました。それは、肉体的な労働から始まり、現在は知的な労働からも解放されてきています。解放≒失業にもなり得そうな中で、逆説的に言えば、人の高度なアイデアとしての知の重要性は益々高まってきます。それは、関係性のないことを関係付けて新たな知を生み出すことなのでしょう。いずれ実現してしまうのかもしれないけれど、どんなにコンピューターの性能が上がってもデータに無いものから何かを生み出すことはできません。また、感情や心の動きは、リアルに対峙しないことには掴むことはできません。人間が相手の心の動きを理解すること自体が困難なことかもしれませんが、それでも心や感情までを習合して新たな知を生み出すことは、まだ人でしかできないことでは無いでしょうか?

イノベーションの本質は知の新結合であり、オープンイノベーションの本質が異質のものとの出会いからの知の新結合であるのならば、我々はより多くの経験や人との出会い、更に心の動きといったものを見つめ直すことが重要になります。そのためには、経済効率重視や単純な成長偏向とは異なる価値観や視点が不可欠になっていくと思うのです。Singularityが起こり、人が労働と貧困から解放されるとしたら、その時には、異常なまでの貧富の格差も無くなり、お金やものの所有による満足よりも、人だけでなく自然も含めて周りを幸せにすることで自らが幸せになることに人が気づき、人の心に寄り添うことに多くの知が使われる、温かい・優しい・明るい未来に変わると信じたいものです。

見えない資産と知財戦略

21世紀において、見えない資産を活かすという命題が、企業の経営や事業構想にとってとても大きな役割を担うようになってきています。一方で、大量生産・大量消費を前提にした20世紀型のビジネスモデルは、人口が減少し大きな経済成長が見込めない国、特に先進国では、継続が困難になってきています。そのことは、R&Dやものづくりを軽視するということでは全くなく、収益が生まれる場所が移動してしまったところに気づき、自らが変わらなければいけないということを意味しています。

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