パンデミックで注目 ワクチン普及に求められるイノベーション
新型コロナの影響で注目が集まるワクチン。その一方で破傷風や麻しんなど、ワクチンで防げる病気で命を落とす子どもも多い。子どもたちを守るには、デジタルヘルスやドローンなどを駆使して、世界中にワクチンを届けるコールドチェーンの構築が鍵となる。
2019年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックは、予防・治療が困難な病気の怖さを人々に再認識させた。現在、世界がワクチンの早期開発と普及を待ち望んでいる。人類と感染症との闘いは長きにわたり、その中でワクチンはさまざまな病気から人々を守ってきた。
持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットでも「安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)1)を達成する」とされており、予防接種率の向上は世界的課題である。
日本においては、家庭では母子健康手帳を利用して幼児期における予防接種の記録を管理したり、学校では集団接種が行われたりと予防接種は身近な存在だ。それでは、世界で予防接種をしっかりと受けられている子どもはどのくらいいるのだろうか。
約2000万人の子どもが
命を守る予防接種を
十分に受けられていない
2012年に策定されたGlobal Vaccine Action Plan(GVAP)では、「1歳の子どもにおけるジフテリア・破傷風・百日咳(DTP2))の3回分のワクチン(DTP3)接種率を90%以上とすること」を目標として定めている。DTP3の接種率は1980年に比べると格段に向上し、2019年のデータでは世界の1歳の子どもの85%はDTP3を接種できている。一方、アフリカ平均は80%を切っており、世界平均も2010年からさほど進展がないなどの問題もある。現在、世界の1歳の子どもの15%にあたる1970万人がDTP3を接種できておらず、2019年には予防接種で防げる病気である麻しんが世界的に流行するなどしており、世界の予防接種状況は十分とは言えない。
図1 1歳の子どもにおけるDTP3の接種率
なぜ子どもの命を守る
予防接種率が100%にならないのか?
ユニセフは紛争、予防接種プログラムへの投資不足、ワクチン不足などさまざまな要因が予防接種の安定実施を阻害しているとしている3)。また、予防接種を子どもに受けさせることへのためらいも未接種の原因として考えらえる。194カ国を対象に行われた調査では、アクセスや知識不足を原因としたためらいは減少している一方で、ワクチンの安全性や誤情報を原因としたためらいは増加している。ワクチン接種へのためらい・拒否は2019年の公衆衛生上の危機の一つとしてWHOに掲げられており、ワクチンに対する不安解消や誤情報への対処も重要である。
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