変革し続けるクボタ グローバル・メジャー・ブランドへの道

鋳物メーカーとして1890年に創業開始したクボタは、今年で130周年を迎えた老舗企業だ。「食料・水・環境」分野で幅広い事業を手がけ、その時々の社会課題に向き合ってきた。代表取締役社長として同社を率いる北尾裕一氏に、成長戦略と今後のビジョンを聞いた。

食料・水・環境分野で
社会課題の解決に挑む

クボタは1890年、創業者・久保田権四郎氏が鋳物メーカーとして創業した。当時の日本ではコレラが蔓延。そこで「人々に安全な水を届けたい」との思いから、水道用鋳鉄管の新しい工法を生み出し、初の国産化を実現した。

「社会課題を何とか解決しようという強い思いで始まった会社であり、それは当社のDNAとして脈々と受け継がれています」と北尾社長は語る。

北尾 裕一(株式会社クボタ 代表取締役社長)

クボタといえば農業機械メーカーという印象を持つ人が多いが、その事業領域は思いのほか広く、「食料・水・環境」の分野で様々な挑戦を続けている。創業期の水道鋳鉄管事業は後に、上下水道や農林、雨水市場などで水に圧力を与えるポンプや、水や気体を制御するバルブなど、水の安全供給にまつわる製品群やサービスに発展。一方、戦前から鋳物技術を活かして農工用石油発動機の製造を開始し、1960年には畑作用乗用トラクタの商品化に成功した。

「当時、農業は全て手作業ですから非常に過酷な産業でした。ここでもやはり、機械化によって農業を変えるという課題に取り組んだ結果、現在の主力事業があります」

時代に応じて変わる社会課題に対応するように、1960年代から90年代にかけて、クボタは事業の多角化を展開。同時に、1972年には米国トラクタ市場に本格的に進出した。もちろん、常に順風満帆だったわけではなく、新事業に参入を試みて失敗した経験もある。

その1つが自動車だ。1919年、「実用自動車製造株式会社」を立ち上げ、1931年には水冷式・4気筒500ccの小型自動車「ダットソン」を販売した。しかし、外国車との競争に勝てず、戸畑鋳物(当時)へ株式を譲渡。これが後の「日産自動車株式会社」となった。この経緯について、北尾社長は「やはり社会インフラの課題を解決する事業の方が当社には合っていたのだと思います。今年初頭にも、食料・水・環境分野で社会課題解決に資する事業を行うというDNAを守っていこうと社内で確認しました」

製品単体から
トータルソリューションの提供へ

中でも重視するのは、「食料の生産性・安全性向上」「水サイクルの効率化や水質向上」「都市・住環境の向上」「廃棄物循環の促進」の4領域に関するソリューションの提供だ。その際にこだわるのは、製品単体ではなくシステム全体のソリューションを提供することだという。1つ目の「食料の生産性・安全性向上」に関するソリューションの提供については、農業機械の販売だけでなく、農機を用いた生産性向上など、顧客の課題やニーズをトータルに考えている。2014年にはICTで営農・サービス支援を行う「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」を開始。超省力・高品質生産を実現するスマート農業に力を入れていく。

「水サイクルの効率化や水質向上」に関するソリューションの提供については、水環境分野で、IoTを活用した「クボタスマートインフラストラクチャシステム(KSIS)」を2017年に開発。水環境プラント・機器の遠隔監視・診断・制御サービスで、巡回点検の省力化を助ける。また、道路下のマンホールポンプの遠隔監視システムに、新たにAIでのデータ分析や異常検知を可能とする「マンホールポンプAIサポートシステム」を導入。2019年10月から自治体向けに提供を開始した。

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