2021年1月号
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知が創る未来ビジネス

誤解されがちなオープンイノベーション 本質は知財とパートナー

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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オープンイノベーションに取り組む企業が増えているが、その本質を正しく理解している企業は少ない。オープンイノベーションの成功には、外部の知見を収集し活用するパートナー戦略と、見えない知を運用するための知財戦略が必要不可欠だ。

オープンイノベーションの本質

イノベーションという言葉と同様に、オープンイノベーションという言葉も世に溢れています。近年はオープンイノベーションを謳った多くの会議や組織ができています。オープンイノベーションの結果として、幾つかの成功事例はあるのでしょうが、大きな成果が出たという話を聞くことは稀のように思えます。

オープンという言葉を辞書で引くと、①覆いがないこと、②公開されていること、誰でも参加してよいこととあります。イノベーションを一言で言うと新結合ですから、オープンイノベーションは「自由な新結合」、誰でも自由に参加して作る新たな結合のあり方ということになるのでしょう。そして、日本では多くの人がこのオープンイノベーションのオープンを日本語の文字通りの意味に受け取り、誤解しているように見受けられます。

オープンイノベーションは、元を辿るとUCバークレーのヘンリー・チェスブロー教授が2003年に出版した「Open Innovation: The New imperative for Creating and Profiting from Technology」という著作にある考え方で、「企業の内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」と定義しています。そして、2006年に同定義を発展させており、正確を期すために原文を記すこととします。

「the use of purposive inflows and outflows of knowledge to accelerate internal innovation and expand the markets for external use of innovation, respectively」

私なりに意訳すると「社内外の知見を使い自社のイノベーションを早期に成し遂げ、そのイノベーションを使い自社の市場での価値を最大化すること」となります。

誰でも自由に参加して、新しい何かを生み出すという仲良しクラブ的なものよりも、自分の会社や組織だけではできないことを外部の知見も使い、早期に新たな製品やサービス、事業を産み出し、市場を取っていくというもので、そこにはオープンイノベーションを仕掛ける側の明確な目的や意思や意図があって進められていくものなのでしょう。ですから、「みんなで集まって自由な議論をして何かできれば良いね」的な発想では、中々、結果が出ません。一見、自由な議論の場に見えて、そこには見えない指揮者や意図やシナリオがあり、一定の方向に導かれていくことで結果に繋がっていくわけです。もちろん、一定の意図やシナリオがあったとしても、全く新しい発想が出てきた場合にそれらを吸収して方向性を補正して変化していく必要はあります。

外部の知見を集めるには、世界中の知と連携する必要があります。古くからは、yet2やNINE SIGMAなど世界中の学者、研究者、エンジニア等にネットワークを持っているものもありますし、Article One Partnersのように知見のマッチングだけでなく、ヘッドハンティングや投資までを一緒に進めようと挑戦した企業もあります。最近は日本でもマッチングを主体としたプラットフォーム型の企業が数多く出てきています。そこで大切なのは、企業側やオープンイノベーションを使って何かを成し遂げようとする人の姿勢と知見と準備であり、何のために行うのか(目的)、どのような結果を求めようとするのか(仮説)、いつ頃までに行うのか(スケジュール)等を事前に十分に準備してシナリオを作り、行う必要があるということです。

yet2やNINE SIGMAなど世界中の知と連携できるオープンイノベーション組織が存在する

まとめると、オープンとは、社内・組織内にこだわらないことであり、オープンイノベーションの本質は、「社内・組織内にこだわらない新たな異質との出会い」による「借り物競走・貸し出し競争」となります。即ち、誰から借りて、誰に貸すか、誰とアライアンスを組むか、知を得るためにどの会社をM&A対象とするかというパートナー戦略が重要になっていくわけです。よって、オープンイノベーションの要諦は、最終的に『パートナー戦略』に行き着くのです。

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