2021年1月号
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持続可能な社会のための千年科学技術

2050年・CO2実質排出ゼロ 本当に必要なことは何か

沖 大幹(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

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菅義偉首相の所信表明演説で2050年実質排出ゼロが掲げられ、ついに日本も国を挙げて脱炭素社会に向けて舵を切ることとなった。しかし、従来の取り組みの延長では目標達成は難しいと沖大幹氏は指摘する。“カーボンフリー”社会実現のためには根本的な行動の変革が必要だ。

CO2の指数関数的削減は可能か

2020年10月26日、臨時国会冒頭の所信表明演説で菅義偉首相は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言して、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力し脱炭素社会の実現を目指すとした。

どうすれば2050年までにCO2排出量を正味ゼロにできるのだろうか。

毎年約7.2%ずつ指数関数的に削減していくと10年で半減し、2020年の現時点から30年間続けるとゼロにはならないにせよ1/8には減らせる。

では年間7.2%減らすにはどういう努力が必要なのだろうか。

実は、国際エネルギー機関の推計では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う活動低下によって2020年のCO2排出量は2019年比8%減少、グローバル・カーボン・プロジェクトでも同様に4~7%の減少と推計されている。つまり、世界中にこれだけの社会的混乱と経済的損失を引き起こすほどの移動制限や自粛でもせいぜい7%の減少にしかならないのに、2050年のCO2正味ゼロ排出を実現しようとすると、来年は現状からさらに7%削減、再来年はさらに前年比7%削減と、同様の削減を毎年毎年ずっと続けていく必要がある。

社会システムの再構築と
イノベーションが不可欠

COVID-19の経験からすると、「暑くても暗くてもエアコンや照明を我慢する」あるいは「飛行機に乗らない」や「車で移動しない」といった省エネ意識の向上やライフスタイルの変化だけで毎年さらなるCO2排出量の7%削減を実現するのはきわめて困難であり、空調を使っても、照明を使っても、便利に移動しても、以前とは格段に温室効果ガス排出が少ない社会システムの構築と、それを支える技術開発イノベーションが不可欠である。

日本のCO2の総排出量に占める発電の割合は4割程度であり、残りはガソリンや重油、灯油、あるいは天然ガスなどを直接燃焼させて発生している。すなわち、電力供給をすべて再生可能エネルギー(や原子力発電)で置き換える脱炭素化だけでは、CO2の排出は半減すらしない。再生可能エネルギーで生成された水素などを含めCO2を排出しない(カーボンフリーな)エネルギー源に車や飛行機の燃料がすべて置き換わったとしても、運輸部門がCO2総排出量に占める約2割しか減らせない。セメントや鉱業、製造業、建設業そして農業など私たちの暮らしに欠かせないモノづくりの現場、あるいは家庭やオフィスでのエネルギー利用全体のカーボンフリー化が必要なのである。

なお、全温室効果ガス排出量に占めるCO2排出量の割合は世界的には3/4程度だが、日本では9割以上なので、日本国内での排出だけを考えるとCO2の排出量をゼロにできれば、残りのメタンや一酸化二窒素などによる温室効果ガス排出分は森林吸収などによってほぼ帳消しも可能である。

残り47%

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