DXの本質は顧客体験の創出 UXを経営課題に

――前著『アフターデジタル』から約1年半で続編を出版された経緯をお聞かせください。

前著ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)の前提はリアル・オフラインでなくデジタル・オンラインなのだという"視点転換"を提案しました。多くの方の賛同を得た一方、データの扱いやUX(ユーザー・エクスペリエンス)について伝えきれていない点があり、また、監視社会への恐怖・懸念など、様々な誤解・曲解を招いた側面もありました。こうした点を深く考えるイベントも予定していましたが、コロナの影響により開催できなくなってしまったことから、新たな事例やアップデートも加えて続編を執筆しました。概念中心の前著に対し、本書は「事業をどうつくるか」に重点を置いています。

前著から一貫してお伝えしたい点は、「DXはビジネスロジックの変更」であり、企業は"製品販売型"から、顧客と長期的な関係性を築く"体験提供型"にならないといけないということです。そのためにはUXが必要で、経営課題としてもっと重視されるべきです。本来データはUXが高くないと得られないはずで、「とにかくデータを貯めればよい」「データはマネタイズの道具」という理解では、企業がデータをユーザーに不義理な形で使用するという事態が起こります。これが「行動データが可視化される監視社会」という考えに合わさると人々が企業を信用しなくなって国が規制をかけざるを得ず、テクノロジーによる発展が止まり、日本が世界に遅れをとることにも繋がってしまいます。

――本書では、「サービスの世界観を提示する」ことも強調されています。

オンラインを前提に、ユーザーの行動が可視化される社会環境では、自社のサービスで実現する世界観の提示が重要です。どのような世界を願うのかを構想し、そのためにユーザーに行動してほしいこと、してほしくないことを具体的にイメージする必要があります。本書では、ネガティブな状態からの解放(freedom)と、権利や自分らしさの獲得(liberty)の2つの「自由」を挙げました。中国や新興国で起きているデジタルイノベーションは前者が多いですが、価値観が多様化し、大量のコンテンツが存在する日本では後者の実現に可能性があると思っています。

――アフターデジタルの事業には、世界観の構想と深い顧客理解が必要ということですね。ありがとうございました。

 

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