2020年11月号
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サイバー文明の夜明け ~激変する経済環境を生き抜く

『追う技術』がビジネスを変える トレーサビリティのインパクト

國領 二郎(慶應義塾 常任理事、慶應義塾大学 総合政策学部教授)

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社会のデジタル化による社会構造や規範の変化を“文明の転換”と捉えて新たな文明における経済や経営のあり方を考える本連載。國領氏はデジタル化で起こる変化の核は「トレーサビリティの向上」であると指摘する。これは既存のビジネスにどのような影響を与えるのだろうか。

デジタル化は不可逆のトレンド

コロナ禍はほとんど全ての業界において、ビジネスモデルや働き方を見直す機会となっている。感染の収束状況によって、元に戻る話もあるのだろうが、以前からデジタル化をすべきことが、今回の騒ぎで進展した部分も大きく、後戻りはしないトレンドができたといっていいだろう。

ここで注意すべきは、オンライン、デジタルで提供されるサービスに働く経済原理と、モノで供給される財やサービスの経済原理は大きく異なることだ。具体的には本シリーズで解説していくが、イメージを持っていただくために、たとえば、モノを作って世界中に大量輸出するのは大変なことだが、映像クリップを創って世界中に配信して何がしかの収入を得るのは、普通の高校生でも可能で、時には爆発的に人気が出てしまうこともあるという事実を指摘しておきたい。

単純にモノ経済とデジタル経済に分けてしまったが、ソーシャルディスタンシングを契機とした宅配サービスの大幅な伸びや、製造業も含めた産業界の在宅ワークの進展を見ても、モノのビジネスの中でもデジタルの影響力が確実に進んでいることがわかる。

短期的な現象を長期トレンドと誤解しないようにするためにも、本シリーズでは、長期的なトレンドの本質を理解することに努めたい。筆者は、デジタル化を単なる新しい技術の登場であることを超えて近代工業文明から、サイバー文明への転換点を迎えていると考えている。デジタルが近代工業文明の根幹ともいうべき、所有権と金銭の交換というビジネスモデルを崩しつつあるからだ。

トレーサビリティ向上が原動力

変化の中核にあるのがトレーサビリティ(追跡可能性)の向上だ。トレーサビリティは、食品業界などで安全対策として使われてきた概念であるが、IoTやFintechの時代を迎えて、ヒト、モノ、カネ、コト(たとえばインフルエンサーの影響力)全ての面で、流れが把握され、記録され、集約され、分析されるようになってきている(図1)。

図1 IoT+クラウド+AIで高まるトレーサビリティ~「見える」世界に

出典:筆者作成

 

トレーサビリティ高まりの意味は、それが不足していた近代工業文明の理解に立ち戻ることでよりよくできる。第二次産業革命はエネルギーを原動力として、商品(モノ)の大量生産と、出来上がった商品の大量輸送を安定的に可能とした。結果として生まれたのが、大量生産された商品をより広い商圏で販売するビジネスモデルだ。このモデルが人類にもたらした恩恵は大変に大きく、多くの人間を貧困から解放した。

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