2020年11月号
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知が創る未来ビジネス

イノベーションと知の本質 目前にある足元の価値を見直す

早川 典重(事業構想大学院大学 特任教授)

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イノベーションとは、何となく目の前にありながら世間一般が注意を示さなかったこと、理解できなかったことを実現することから生み出される。そして、技術止まりではなく、世に出て使われて初めてイノベーションと呼べるものになる。

ネズミ捕りに関連した発明や特許は1万件近くあるものの、実際に使われているのは、上記の画像のような昔ながらのタイプにとどまる

理解されていない
イノベーションの本質

イノベーションという言葉が、日本中どころか世界中で溢れています。猫も杓子もの状況であり、一流と呼ばれる企業の多くが新しい事業の基軸を模索しており、イノベーションのための組織を作ったり、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を設立したりしています。

また、様々な方から、「イノベーションを起こしたいのですが、どのようにしたら良いのでしょうか?」と相談を受けるのですが、イノベーションやオープンイノベーションの本質を十分に考え理解されていないのではないか? と感じることがあるのが実状です。

「イノベーションから思い浮かべる言葉は?」という問いに対して、「発明」、「新技術」、「新しい事業」、「画期的なこと」などの回答を頂きます。一方で「イノベーションから最も遠いもの」との質問には、「権威」、「慣習」、「硬直化」、「組織」などの意見を耳にします。何となく、我々が普段感じているイノベーションのイメージが伝わりますね。

私は、Stanford Research Instituteのエグゼクティブ向けイノベーション研修を受講したことがあるのですが、最初に聞いた話が印象に残っています。ネズミ捕りの発明や特許は、1万件くらいありますが、実際に使われているのは、上記の画像のような昔ながらのネズミ捕り器だということでした。

ここにイノベーションの本質の一つがあります。1万件近い発明や新しい技術自体は、イノベーションを起こしていないということになります。なぜなら世に出て使われていないからで、どんな素晴らしい技術や発明でも使われていない以上、人の目にも触れることがありません。やはり世に出て使われ、役に立って初めてイノベーティブになるのです。

江戸時代、たくあんは
イノベーションだった!?

シュンペーターは、『経済発展の理論』の中でイノベーションの定義を「新結合」としています。また、『イノベーションのジレンマ』の著者のクリステンセンも「一見関係のなさそうな事柄を結びつける思考」と言っています。

この新結合や結びつける思考という言葉を言い換えると、今までに世に出なかったことを「つなげること」で「社会や市場で使われるようになること」になります。発明や新技術が製品化されて市場で使われ事業化されることが必要となるわけです。あの技術は素晴らしい技術だったけど世に出なかったなぁということは、残念ながらイノベーションには繋がらなかったのでしょう。

唐突に聞こえるかもしれませんが、たくあんは、江戸時代においてイノベーションを起こしたと聞いてイメージが湧くでしょうか? 大根は季節ものですから、ある時期に一斉に収穫されます。だから、販売競争が激しい中で豊作だと価格下落もあって農家の皆さんも大変です。また、水分が多く重いので輸送費も相当かかります。

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