世界トップ15社の戦略を凝縮『経営戦略4.0図鑑』ほか注目の新刊

――本書の読者対象は誰ですか。

私は競争戦略アナリストとして、GAFAやBATHといった米国・中国の諸外国のメガテック企業の動向を追ってきました。本書は、個別の事業分野に馴染みの薄い読者向けに全体を提示する意図で執筆しました。数字の「4.0」は、世界的な経営学者であるフィリップ・コトラーの「マーケティング4.0」を念頭に置いています。

――全体的な市場動向を見渡してお気づきの変化とは何ですか。

1つはコーポレート・ガバナンスの変化です。昨年、日本の経団連に相当する米国の経済団体が開いたラウンドテーブルでも「株主資本主義からステークホルダー資本主義へ」が唱えられました。株主一辺倒でなく社員や顧客にもバランスよく配慮した経営への転換は、本年1月のダボス会議でも打ち出されました。

いま1つはビッグデータの利活用に伴うプライバシー保護の潮流です。2020年初めに新型コロナウイルスの感染拡大が生じ、対面的な交渉やサービスがオンラインへ大々的に切り替わりました。「ウィズ・コロナ」の今、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が劇的に進む一方、チーフ・プライバシー・オフィサー(CPO)の役割も重要視されています。

――経営戦略4.0の実践は、新事業の成否とどう関わっていますか。

15社を観察すると、事業構想の手法が全く違うことに気付きます。これらの企業は独自の大胆なビジョンを提示し、まだ世の中にない新たな価値を生み出します。また、環境問題の深刻化を事業リスクと捉え、SDGsやESGといった目標にも能動的に対峙し、本業を通じて取り組みます。その事業目的には、カスタマー・エクスペリエンスあるいはカスタマー・サクセスといった「顧客満足度の向上」があります。同じ無人レジの設置でも、顧客利便性の向上か人手不足補完かで、もたらされる結果が異なるのです。

この顧客中心主義か企業中心主義かが、グローバルに活躍できる企業か否かの差を生んでいます。活躍できる企業には「顧客の課題解決の集積こそ社会課題だ」という前提があります。近年は取引プロセスを意識させず、フリクションを無くす新たな事業の開発も進んでいます。日本企業もこの流れに乗り、大胆なビジョンで新しい構想を生み出して欲しいと思います。

 

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