新しい日本の姿を描く AI実装社会への処方箋

コロナ禍であらわになる日本の現状

コロナ後の「AI実装社会」というのが依頼された題だが、きわめて技術的な響きがある。コロナ後の日本という問題は、技術の導入で済む話ではない。日本のスピード感からみて実現には長い年月を要するだろうが、それはそれとして、コロナ後の日本のあるべき姿をITとAIを通して率直に描いてみたい。

まず、ウイルス禍によって露見した日本の現状を挙げる。

①「IT後進国」であることが世界に知れ渡った(10万円給付金のオンライン滞り、学校臨時休校による自宅学習の混乱、第5期科学技術基本計画が謳った「Society 5.0」の非現実性、データ不足による的確な政策実施の遅れ、その他)、②以前からデジタル化、AI化を図ってきた企業とそうでない企業の差が拡大、③伝統的な「対面依存」人事評価制度が在宅勤務に合わない、④教育における最大の課題である経済格差による教育格差の拡大が加速、⑤医療、保健、教育、家庭生活など国民の生活の根幹をなす非経済部門を支えてこなかったツケが回ってきた、⑥デジタル革命による世界潮流の激変に背を向けて昔のままの仕組みで経済活性化を再現しようとした政治・行政・経済のシステムの非効率性、⑦IT、AIの研究者・技術者不足はもちろん、中学生からシニアに至るIT活用の低水準、⑧その他多数。

看過されてきた警鐘

上記は奇を衒った論点ではなく、その多くが以前から指摘されていたことである。特に「IT後進国」を予見した警鐘は早くから鳴らされてきた。筆者の関与した例を挙げる。

①経団連主催「高度情報通信人材の育成に関する産学官連携会議」において、「情報技術の中核がわかるIT人材が、現在日本にはほとんどいない。まずは産官学がそうした現状を認識しなければならない」と述べた(日経コンピュータ2005.12.20ニュース)、②「一括採用は企業の怠慢」(日経ビジネス2002.12.23編集長インタビュー)と述べた、③2010年から文科省(と総務省)の事業で学校へのIT導入について、多くの方々とモデル校実践まで含め5年間努力した、④その他多数。残念ながら、その多くが現在にはつながらず、そしてウイルス禍が起こった。

以上をまとめて言えば、世界の先進諸国と違い、2010年代に至ってさえ、行政や企業の多くがデジタル革命にほとんど目を向けず、デジタル社会の特徴である仕事や生活の柔軟性よりも昔ながらの管理体制や横並び体制を温存してきた、そのツケがウイルス禍によって露見した、ということである。

「AI実装社会」への処方箋

その一方で、先進諸国は着々とAI実装社会に向かっている。米国トランプ政権も、幾多の問題点はあるにせよ、AI予算の大幅増額案を打ち出している。その中でAIどころか「IT後進国」であることが世界に露見した日本が、他の先進国並みのAI実装社会を実現するにはどうすればよいか。抽象的だが以下に挙げてみよう。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り54%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。